「命を落とす母親たち」

NI JAPAN(ニュー・インターナショナリスト・ジャパン)から発刊されている『Mothers who die 命を落とす母親たち−開発途上国のお産の現実』(No.108/2009年3月号)を取り寄せて読みました。
ここには“病院での出産、治療がもっと身近にあれば”という話、想いが詰まっています。病院はあるけれども、遠くて間に合わない、お金がないというのがその理由になっています。
日本では、病院は以前まではそんなに遠くにあることばかりではなかったですね。私が社会人となってからしばらくは、「医療崩壊」という言葉は存在しなかったとおもっています。でも、あっという間に「ちょっと行ってくる」という距離には無くなっていました。昨日もツイッターで小児科医の方が近くにないからといって近所の内科で済まさないでというようなことを仰っていましたが、私の家とて他人事ではなく、小児科医は車で30分行かないと会えません。近くに病院は複数あるけれども、小児科はありません。30分でもまだ近い方だと言われる方もいるかもしれません。うちよりもっと田舎はありますから。以前に住んでいた町ならば、1時間は必要かもしれません。開発途上国の状況に似たものが、この日本で再開し始めてしまっているのだと、読んでいるときに開発途上国の出産の悲惨さに重ねている私がいました。

精神的なものとしてもありますよね。ブログで何度も言っていますが、病院がそこにあっても行こうとしない方がいる。その方達が憧れる自然というものは、開発途上国にまだまだ残っています。

データを引用しますと、

母親のリスクが最も高い国々と低い国々
※妊産婦死亡率(MMR)は、出生10万件に対する死亡数を示している。生涯におけるリスクの計算では、出生率も考慮されている

生涯のうちに妊娠・出産で死亡するリスクが高い国
            妊産婦死亡率  生涯のリスク
1.ニジェール       1800     7回に1回
2.シエラレオネ      2100     8回に1回
3.アフガニスタン     1800     8回に1回
4.チャド          1500     11回に1回
5.アンゴラ         1400     12回に1回
6.ソマリア         1400     12回に1回
7.リベリア         1200     12回に1回
8.コンゴ民主共和国   1100     13回に1回
9.ギニアビサウ     1100     13回に1回
10.ルワンダ        1300     16回に1回
母親のリスクが最も高い10カ国のうち、アフガニスタン以外は全てアフリカの国である。
            
生涯のうちに妊娠・出産で死亡するリスクが低い国
                  妊産婦死亡率   生涯のリスク
1.アイルランド            1      47,600回に1回 
2.ボスニア・ヘルッツェゴビナ    3      29,000回に1回
3.イタリア               3      26,600回に1回
4.ギリシャ                3      25,900回に1回
5.オーストリア             4      21,500回に1回
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14.オーストラリア           4      13,300回に1回
18.カナダ               7      11,000回に1回
26.英国                8      8,200回に1回
36.ニュージーランド         9      5,900回に1回
40.米国                11      4,800回に1回
現在、妊娠・出産で死亡するリスクが最も低いのがアイルランドだ。2番目は意外に思うかもしれないがボスニアである。

※日本のMMRは6で、生涯のリスクは11,600回に1回(2005年)。

妊娠・出産で女性が死亡する理由
アフリカとアジアのどちらの地域でも、最も多い死亡原因は大量出血である。

これは円グラフになっているのですが、アフリカで大量出血は34%、アジアでも31%と、やはり避けようのない事態であることがわかります。


この冊子の残念なところは、巻末にある「アクション!〜何かする・もっと知る」というコーナーで紹介されている書籍類に、自然分娩万歳のものが含まれていることです。正直、よく調べずに「掲載してください」と連絡あったもので出産関係のものならとやってしまった感じがします。そこが非常に残念でしたが、死亡してしまった妻の亡骸の横に赤ちゃんと、泣き崩れる夫の写真なども掲載されていて、もしも「出産で死ぬ」ということを想像出来ない方には良いのではないかとおもいました。
送料込みで500円(全16頁、日本版のみ/英語版もあります)です。これから助産院や自宅出産しようという方には是非、読んでみて欲しいとおもいます。