大好きだったオカマチャン

23歳で亡くなってしまったオカマチャン。

私の母方の従姉妹(肉体的には従兄弟だな)で、私達の血筋とはおもえないくらいのベビーフェイスで可愛い顔をしていた。

誰とでもオホホホーとオカマの王道の笑い方で場を和ませていた。

7年前になるが、彼が23歳の初夏の頃、自室のベットの上で息絶えていたところを母親に発見された。


彼が20歳のとき、彼の父親が癌で亡くなった。

叔父のご霊前で私とオカマチャンの二人きり、1時間近く語らっていた。

「琴母ちゃんにだけは言うけどね」

と、あらたまるから何事かとおもっていたら、

「僕ね、同性愛者なんだ」

と、多分親戚一同、殆どの人が気付いていたのにあえて言うからちょっと可笑しかった。

「ホモとかでもないんだよね、僕は“オカマ”なんだろうね」

と言って、その後しばらくはオカマの定義で話が盛り上がった。

「自分がこう(オカマ)だってこと、お父さんにだけは最後まで言えなかったの…」

と、それだけが心残りなのだと言っていた。

「大丈夫だよ、叔父さんは今はもう超人の世界にいるんだもん、気付いているし、見守っているよ」

と言ったのだが、叱られてもいいから直接言いたかったと惜しんでいた。

その彼が、誰にも予測の出来なかった速さで天国へと旅立ってしまった。


いわゆる突然死なのだそうだ。

大卒で新入社員として働き始めたばかりの頃で、職場でちょっと具合が悪いからと早退し、自宅の自分の部屋で休むと母親に伝えたまま、そのまま彼は逝ってしまった。

私の実母と実弟がオカマチャンの訃報を受け、家に駆けつけたところ、警察の現場検証がまだだなので遺体は亡くなったときのまま、ベットの上で苦しみもがいている姿のまま死後硬直をしていて、その苦しそうな形相を見たと言っていた。

私はオカマチャンから手紙を貰っていたこともあるし、いつの日かオカマバーを経営したいと言っていたときに、私も手伝うと約束していたことや、私の旦那が好みだとか、当時のオカマチャンの片想いに相談を受けていたことなんかがあるから、すぐにでも駆けつけたかったのだが、旦那の仕事の関係で出掛けていたので、それが叶わなかった。

私の大好きな従姉妹だった。

自慢の従姉妹だった。


気が付けば、オカマチャンが天国に逝ってから7年経つ。

彼がいた頃のままの私がまだそこ等中にいるというのに、彼だけがいなくなっている。

私の中で、オカマチャンは23歳のままで、いつでも

「琴母ちゃん!」

と笑いかけてきてくれるけど、それは全て思い出なのだ。


先日、3年ぶりに叔父とオカマチャンのお墓参りに出掛けた。

叔母さんが足繁く通っていることがすぐにわかる。

供えられた花の枯れ具合、水の腐り具合、敷地の汚れ具合のどれをとっても、1ヶ月も経っていないように感じられた。

叔父さんには申し訳ないことを言うが、叔父さんだけが眠っていたら、叔母さんもここまで頻繁には通わないだろう。

やっぱり叔母さんはオカマチャンの世話をしたくって、今でもあの日のままなのだろう。


オカマチャン、天国でもオカマなのかな?

またオカマの定義付けで盛り上がろうよ。

夢の中でも語ろうよ。

そのときにさ、よかったら琴子を連れてきてよ。