琴子とクリスマス

私は特別に入信している宗教はなかったのだけど、仏陀の話が好きだったので、問われれば「仏教徒です」なんて答えていた。

それは琴子を産む前までのことで、琴子を産んで天国へ見送ってからは、もし誰かに信仰を問われたら、「全部です」と答える。

琴子がどの宗教の神様にお世話になっていても構わないように、という気持ちを込めて。


私はクリスマスは自分の性に合わないと、2002年のクリスマスの日までは特別におもうことはなかった。

プレゼントを貰えば嬉しかったけど、クリスマスじゃないときでもくれれば嬉しいし、とにかくクリスマスが近付くことでドキドキすることはなかった。


2003年の12月、テレビでも街頭でも何処ででも、いつでも私は世間から見捨てられたような気持ちで過ごしていたのに、クリスマスが近付き、ディスプレイに天使の姿を見つけたりすると、なんだか得意な気持ちになれた。

「うちには本物がいる」

っていう感じなのかなぁ。

自分でも上手く表現出来ないけど、琴子の出番なんだって感じていた。

でもまだ小さいから、天国でもまだ4ヶ月、トナカイにエサをあげる係りくらいなのかなぁって、天使ママ同士のメールのやり取りの中で会話したのを覚えている。

他人にはただの空想だとおもわれるような会話でも、私はかなり真剣だった。

琴子の父親が動物好きなので、琴子も天国で動物を可愛がっている気がしてならない。

とにかく一転して、クリスマスは私にとっても存在価値の大きいイベントになった。


私のクリスチャンの友人からは、年賀状は届かない。

クリスマスカードが届く。

今年もカードが届いた。

今年からはリンズの名前が増えた。

琴子のことは今年は書いていない。

こうやって少しずつ、琴子の存在が薄れていくのは仕方の無いことなんだ。

でも私の中では、しっかりと琴子は存在している。

昨日食べたケーキの味を、琴子もきっと味わっている。

リンズが鳴らず、プレゼントに貰った鈴を、琴子も一緒に鳴らしている。

私の中だけの存在でもいい、琴子が楽しくしてくれていたら、それでいい。


Merry Christmas.

琴子、クリスマスおめでとう。

Merry Christmas.

皆にも、クリスマスおめでとう。