自宅出産を予定されている方へ

いつも当ブログにご意見くださるsuzanさん(産科医)から、今回もまたとっても貴重なご意見を頂きました。
自宅出産を計画、予定されている方には是非、お読み頂きたいとおもい、記事として取り上げさせて頂きました。
suzanさん、有難うございます。

前にも書きましたが、分娩の、少なく見ても7割は何も問題なく終わります。
分娩場所が、病院だろうと助産院内だろうと、自宅だろうと野原の真ん中だろうと、無事に終わります。

お産の現場に20年いた立場から申し上げますと、
「無事に終わった自宅分娩」というものは、
そこに助産師がいようといまいと、
「7割の幸運」だと思います。

もっと厳しい言い方をします。
自宅分娩、と選んだ瞬間から、自分の死、赤ちゃんの死を含めた
ありとあらゆるリスクは、3割の確率で避けられないもの、という覚悟は絶対に必要です。

この考えでいけば、自宅分娩に立ち会うことを引き受けた時点で
どんなに評判のいい助産師であろうと、
助産師自身は「3割の確率で異常が必ず起きる」と思っていなくてはいけません。

そして、お産のこと、赤ちゃんと母親の安全を心から願い、
安全を第一にしているのであれば
自宅分娩は引き受けないと思います。
3割の確率で墜落する飛行機に、どれだけチケットが安くても乗る人間などいないように。

つまり、自宅分娩を引き受けた、というだけで
私は、その助産師は信用してはいけない、と思います。

自宅分娩を選ぶがわの事情もさまざまあるでしょう。
でも、時代が決定的に変わったのです。
医療資源(カンタンに言えば産婦人科医師の数)が激減した時代に
自宅分娩では安全の「確保」は絶対に無理です。

この時代に、自宅分娩を請け負っている助産師は
時代が見えていないか、
「自宅分娩」という宗教の信者です。
時代が見えていない人間にはいつまでも見えることはないし、
信者ならなおさら、たった3割のことで「信仰」を変えることはないと思います。

信仰内容で信者を責めても仕方ないように、
自宅分娩を、特にリスクの説明なく受け入れる助産師を責めても
仕方ない、と私は感じてしまいます。

自宅分娩ができますよ、とある助産師が言うのなら
その影にある事情「7割は絶対に無事に終わる」と
「ただし残り3割には何らかの異常や危険がある」を言わなくてはならない。
もし言えば、自宅分娩をする母親はいなくなるかも知れません。
その場合、きちんと自宅分娩のリスクを説明するような良心的な
「自宅分娩をうけおう開業助産師」というものは存在しなくなるかも知れません。

結果的に、「お産ができる場所」「お産できる機会」はますます減っていくのでしょう。
そういう時代、と、産む方々にも考えてほしいです。
安全にお産したいなら、どんなに遠くても病院へ。
お産が近くなったらマンスリーマンションを借りて病院近くへ引っ越す。
そのくらいの覚悟でないと、
母親の立場から安全なお産について手をつくした、とはとても言えない、
そういう時代なのです。

以上です。
私も全く同感します。
自宅出産を請け負っている助産師の方たちの中にはHPを持ったりブログを通じて、無事にいったお産を紹介し、とっても素晴らしいお産だったと話されている方もいます。
でも、危険が生じた話はありません。
日本の現在の法律では自宅出産は違法ではありません。
産む場所を選ぶ権利を私たちに与えていますから、自宅出産も助産院も病院も、それぞれの条件や環境で選ぶ自由はあります。
また、助産師すらよばない“プライベート出産”なるものも、経験者が堂々と書籍を出してやり方を語っていたり、戸籍の載せ方についての情報を流したりしていても、お咎めのない状態です。
マスコミでさえ上手くいった話ばかりですから、まるで病院でだけ、母子が死んでいるかのような情報の偏りです。

今回のsuzanさんのような本当に聞くべき声、意見は自宅出産や助産院を選択する方に事前に伝えるべきことです。

私も、自宅出産を請け負っている助産師の方がリスクの説明等をしていても、それでも受けているという状態を見ると、実際には危険や安全は二の次にしているとしかおもえません。
最近は『どこで産もうとそれがあなたにあった素晴らしいお産なんだ』というような言葉を書いている助産師のサイト等も見ますが、それ以外の言葉を読めば、それがいかに建前で言っていることかとおもいます。
本気でどこで産むと素晴らしいお産だとおもっていらっしゃるのなら、最初から安全を最優先し、衛生面でも管理できない自宅出産は受けないでほしいです。

自宅出産を予定されている方に伺いたい、
子どもが死んでしまうこと、身体の一生の自由を奪われることをおもえば、自宅に固執する必要はなくなりませんか?