自宅出産のリスクの説明

先日、当ブログ『こうやって、自己責任にされていく』(7月27日記)にご意見くださった産科医のおさママさんのご意見を紹介させて頂きます。

自宅出産をした方で、その際に助産師にきちんとした説明を受けたというmimiさんへのご意見です。
先にmimiさんからのを一部抜粋してご紹介します。

私は第一子は病院で産んで、第二子は自宅出産で産みました。私のところに来てくださった助産師さんは、自宅出産のリスクも丁寧に説明してくださいましたし、逆子は自宅では産めないこともしっかりお話くださいました。自宅で出産できるのは、それより前にしっかり検査を重ね、安全であるかの見極めがしっかりできるからだということも。お金がかかるものを勧められるということは一切なかったです。

次がおさママさんからです。

こんばんは。信頼できる助産師さんがいてくれて、無事自宅出産が出来たんですね。
結果的に問題なくて、本当によかったと思います。
ほとんどの方、特にローリスクの経産婦さんは自宅分娩でも問題ないでしょう。

リスクを丁寧に説明受けたということですが、本当のリスクは「自宅分娩」そのものなんです
もしも、お子さんが仮死で産まれた時(それは、いつでも起こるし、産まれてみないとわからないこともあります)、あなたの自宅には吸入できる酸素はありましたか?蘇生をしやすい台、赤ちゃんを暖めたり、吸引をしたり出来るものはありましたか?酸素飽和度などのモニター類はありましたか?蘇生に熟練したスタッフが複数いましたか?
そういうものが、「自宅」または「助産院」にはないんです。

そのことについては、説明は受けたのでしょうか?
蘇生がうまく行かないと低酸素性脳症となったり、新生児死亡となりえることを受け入れたのでしょうか?
骨盤位だから、新生児仮死・死亡となる訳ではありません。
頭位でも経産婦さんでもなります。
ただ頻度が違うだけです。

もちろん私の病院でも、すべての蘇生の必要な赤ちゃんを助けることが出来るとは言えません。
でも、私も含めて病棟のスタッフのほとんどは、新生児蘇生コースの訓練を受け資格を取り、
蘇生器具はいつでも使えるようにし、モニター類も用意し、
分娩があるときは、いつでも保育器を暖めて使えるよう準備をしています。

(強調しているのは私、琴子の母です)
ちなみに、後におさママさんの知人の方が自宅出産された際に酸素を持ち込んだりした助産師も居たそうで、そのように準備出来ている助産師もいるというご報告を個メールで頂きましたので、この場で付け加えさせて頂きます。
ただそれでも、病院での設備に適うわけはなく、更に私からここに自宅出産のもう一つの大きなリスクとして、衛生上の問題もあげさせて頂きます。

自宅出産を選択する際に、搬送を受け入れてもらう可能性のある病院までの距離や、交通事情で考えられる問題も無視しないで欲しいです。
救急車が渋滞の道の中、徐行でやっと通過していくのを通勤時間帯に目にしたこともあります。
これは助産院の場合も同じですね。
自分では帝王切開をしないつもりでも、急変は誰にでも生じる可能性があるってことを知っておく必要はあります。
その帝王切開がすぐに出来ないのが助産院、自宅出産で、更におさママさん仰る蘇生をするのに適した台とか、生まれたばかりの子供の命にすぐに対応出来るかは、十分に検討された方が良いとおもいます。

悲しいことに、「じゃぁ病院なら100%無事なのか?」と問われると、はいとは言えません。
でも、『親として最善を尽くしたのか?』という自責の念、最後はここに辿り着きます。

助産師が説明しないからその問題は存在しない、というのではなく、存在する問題の説明がないだけなんです。

自宅出産を選択する際に、是非、おさママさんのご意見を参考にして頂けたらとおもっております。

追記;
産科医の桜井純一郎さんからのコメントも、自宅出産のリスクの説明として知って欲しいとおもいます。

そうですね。
おさママさんとは違う表現になりますが
「自宅出産の場合(や助産院での出産の場合)『病院なら助かる状態』でも貴方や赤ちゃんが死ぬことがあります。あるいは重大な後遺症が残ることもあります。それで良いですよね?」
という質問を貴方と、あと夫にも(必要ならばその他の家族にも)されましたか?ということですね。
それが「自宅出産のリスクも丁寧に説明する」ために必要な内容です。
はっきり言われてないとしたら「きちんとした説明」とは思えないし、家族に話すことなく貴方だけに説明、というのでしたら以ての外です。

なお細かい差異を言い出すと病院や産科医院であっても、開業医と総合病院と周産期センターとなどなどで全部リスクは違いますが、自宅分娩や助産院とは格段の差があると思っています。

おさママさん、桜井純一郎さん、有難うございます。