「助産院は安全?」 ブログ開設から今日までを振り返って

このブログを楽天で始めてから、もう1994日になるそうです(開設日:2005/09/06)。私がブログを立ち上げた当時は、「助産院で産むことを美化せず、そして助産院だからと否定せず、助産院について考えていきます」という自己紹介の文章にある通り、助産院や自宅出産を請け負う助産師がいなくなることを求めているつもりはありませんでした。それは日本助産師会が改善すると約束したことが、記憶にまだきちんとした期待として残っていたこともあったし、私が個人の体験からだけで望むことではないのだろうとおもっていたからだとおもいます。でもその後に他の方達からの事故の報告を受けたり、一緒に考えたり、そしてその方達の中から提訴をする方がいたり、提訴のための準備だけでもしたり、全くそういうことを選択肢にもせずにいらっしゃったりと、皆さんが選ばれることから私も沢山のことを学ばせて頂き、一つの結論を得たように最近おもうのですが、
助産院や自宅出産が安全を最優先していると納得出来る日はこのままでは来ない」
ということです。
琴子を亡くしてから8年過ぎたけど、最善を約束した助産会含め、自然出産を主とする助産院、自宅出産の在り方に対して、ガイドラインは出たけど遵守していると感じることはあまりなくて、総体的にみて悪化していることの方が多いと感じています。
ブログの一番最初の記事は「これも大事な一歩。」。中で私は

助産院で産むこと全てが危険だなんておもわない。
病院でだって、事故や悲しいお産はある。
ただ、助産院での事故の報告や報道は殆どない。
これって、私が娘を助産院で出産したけど亡くしたって報告すると、多くの人が
「自分で選んだんだから仕方が無いね」
って言っていた言葉による力が大きいとつくづく感じる。

と言っていますが、残念ですけど、今は考え方は助産院で産むことは危険だとおもう、どんなにリスクが最小限に留められるようにしていると言われても、「助産院や自宅出産こそがリスク」と知った以上は、1994日前の私のように「全てが危険だなんておもわない」とは言えない。これは私にとっては残念でもあります。
嘱託医の問題も、私は医師の方にもご意見を求めたいことだけど、引き受けた助産師は、リスクの説明をきちんとしていますか? どいう説明をしているか、きちんと把握してくださっていますか? そして、助産師は医療行為や病院、それこそ“西洋医学”と区切って言い放つ思想に、否定の気持ちはないですか? そのような状態で、助産院や自宅出産は「周産期医療の中」にあるといえるのでしょうか。いえないのだとしたら、助産院や自宅出産を病院での出産と同じようにして考えさせる現在に、私は疑問も感じます。嘱託医がいる、提携している病院へ搬送できるとシステムの説明はあるけれども、「だから助産院は安全です」へと直結して語れる状態でしょうか。


とっても不思議な気持ちがあるのです。実は昨年のいつ頃からか、私が裁判で非常にお世話になった医師Xさんと電話でお話しするときに、「助産院がこのまま存続出来る状態なのか?」と話をすることが何度かありました。私自身、ブログを通じて沢山の勉強をして、「助産師たちは問題を知っても都合悪いことには知らぬ振りをするし、自分達の営利優先でしか事を進めない」ということに気付いているので、一頃のようには考えてはいなくて、「このままの状態での存続は有り得ないとおもう」と話していました。そして、つい先日も医師Xさんとお話していて、そこで「そろそろ自分の意見をブログでも書こうとおもう」と話していたんです。そしたらそこに、先日の当ブログ産屋、そして村へ?二児の母さん

この内容とはずれているかもしれませんが、疑問というか教えていただきたいと思うことがありコメントいたしました。

もし、助産院や自宅出産が無くなる社会になり、皆が病院での安全なお産を求めて病院にしたとすると病院でまかないきれるのかなぁと。
検診でお世話になった病院でも早めの分娩予約をお願いしていたり、○月はもういっぱい!などの電話対応なども聞いたこともありました。
上手く書けませんが、お医者さまの負担は助産院や自宅出産がなくなった方が減るのでしょうか…。

とくださりました。そして、勤務助産師のふぃっしゅさん

私もこのブログに出会った頃は、「きちんと医療機関と連携している」助産院であれば問題はないぐらいに思っていました。
今は、医師のいない場での出産場所はなくしたほうがよいと思っています。
二児の母さんが、よい助産院にであったことは本当によかったです。
でも、問題はよい助産院、よい開業助産師かどうかの問題ではないのと思います。
「正常なお産は助産師でできる」のではなく、「お産は終わってみないと正常かどうかわからない」という明白な事実を助産師が受け入れていないことが問題なのです。
何度もここで書かれているように、正常に経過してきた出産が一瞬にして母子の命を失わせるのがお産です。
半世紀以上前は、年間2000人近いお母さんが出産で亡くなっていました。半世紀前ってすごく昔のようですが、私が生まれた頃です。赤ちゃんはもっとたくさん亡くなっていました。
大事な家族を出産で失わないようにするために医師のもと、助産師・看護師とマンパワーも必要です。出産の緊急時には専門職の人手がたくさんいるからです。
「異常がでたら搬送」では間に合わないのです。なぜ助産院はその点をきちんと伝えないのでしょうね。

それと10年ぐらい前まではあちらこちらに産科医院があって、お産の場所がなくなるとか自分の勤務先がなくなるなんて全く想像もしていませんでした。
いっきにここ数年で産科崩壊といわれる状況になりました。その引き金になったこととして前のエントリーにある大野病院事件や奈良の大淀病院の件、そして堀病院の看護師の内診問題などがあります。本当は、次の世代の産科の先生方を社会で育てていかなければいけない大事な時期に、多くの先生が出産の場を離れました。

もし産科医が二人いて帝王切開に対応できれれば、助産師3〜4人と看護師数人で少なくとも年間300件ぐらいの分娩をみることができます。
助産院ではどうでしょうか?数人の助産師で経営しているところが多いようですが、月に10件の分娩をしていたら多い方だと思います。
どちらが、より安全に、多くの出産を受け入れられるでしょうか?
また年間1万件ほどの助産院での分娩の半数以上が首都圏と大阪などの周産期センターや総合病院のある地域に集中しています。
中には助産院が存在していない県もあります。
これは、周産期センターや総合病院が近くになければ助産院自体が成り立たないことを意味しています。

本当なら1990年頃には助産師だけで出産を請け負う場所は自然淘汰されていたのではないかと思います。産科医のいる安全な場所での出産が何よりも大事なことであり、世界中、それがかなわなくて多くの命が失われているのですから。
その安全が確保された上で、それまでの病院の出産に足りなかった部分、産婦さんのアメニティの部分を病院も変革し始めたのが90年頃です。
でも同じ頃に、病院での出産を否定して助産師による出産の方が良いという風潮を、助産師側が作り出してしまったのではないでしょうか、安全と引き換えに。

病院の出産に足りない部分があれば、改善していく方に全力を尽くせばよいことだと思います。そうではなく開業して自分の城を築くことで、理想のお産を求めているのが助産院ですね。
「こんなに素敵なお産をしています」というところがあってもかまわないと思います。
でも、日本の99%のお産、リスクの高いお産を請け負ってきた病院を否定しながら助産院の存在意義を求めるのだけはやめてほしいです。
また病院でもたくさん自然な経過のお産もあります。本当に助産院で勧めている「産むための体づくり」などが、根拠のあることなのかも疑問です。そこまでしなくても、と思うことに意味を持たせて妊婦さんたちに勧めていることも問題があると思います。
いつの間にか、産む人たちの間に溝をつくってしまったのではないでしょうか?

本当にお母さんと赤ちゃんのことを考えるのであれば、まずは安全性です。
それは助産師だけでは得られないものです。
だから助産師だけで分娩を扱う場所は、将来的にはなくしていくべきだと私は思います。

とくださいました。なんだか琴子だなぁとおもいました、琴子が「ほら、母ちゃんも言って!」と導いているような気がしてなりません。それも、一昨日の晩から昨日にかけて私は琴子のお墓参りに行っていて、その間にこういう対話がなされていて、その数日前に医師Xさんと「そろそろ自分の意見を書こうとおもっています」なんて話していて…ちょっと驚きました。

ブログ開設から今日までを振り返り、感じるままに言いますと、私は助産院は安全ではないとおもっています。自宅出産も同じです。どっちがどのくらいとかではありません。病院に対しての物理的な問題もありますが、思想での問題が大きいです。開業助産師の方がこのブログに対して荒らし行為をしたという事実もありますし、荒らし行為をしていない助産師の方でも、以前にsuzanさんが仰っていたことありますが、何故自分のところではこういう対策をしているなどの、具体的で詳細な説明が頂けないのかも疑問です。

二児の母さんの「助産院や自宅出産が無くなる社会」ということを受けての私の気持ちですが、私が「無くなるべきだ!」という働きをするということはないです、それは社会がいつか出すべき答えだとおもいながら、今まで通り、このブログで自分の感じたこと、勉強したいこと、したことを書くのと同時に、同じように助産院や自宅出産で悲しい結果、辛い結果になった方達のお話を伺ったり、その方達がブログを通じてご自分達のお話をしたいとおもわれたら一緒に記事を書かせてもらったり、そこからまた考えたり、必要であれば色々な方にご意見を求めたり、相変わらずです。だからタイトルも変えません。ただ、今の開業助産師の在り方や現状にはブログ開設のとき以上に危機感を感じているのは事実で、同じタイトルでもあの頃の私は、自分のことしか知らなかっただけです。
助産院や自宅出産が選択肢として存在している以上、私は「助産院は安全?」と、なかなか伝えられない事実を伝えるばかりです。そして存在している以上は、母子の安全を最優先していると誇れるようにして欲しいです。