「2011年版 助産所評価ハンドブック」から (6)

「2011年版 助産所評価ハンドブック」から (5)の続きです。
強調箇所は私・琴子の母がしています。
黒太文字はタイトルです。

2011年版 助産所評価ハンドブック25ページ目の続きです。
2-2の「安全確保のための体制・手順」の

医療法第19条に基づく嘱託医師及び嘱託医療機関との連携が整っている。

ですが、この評価の対象が先日の「2011年版 助産所評価ハンドブック」から (4)
にもある通り、23ページ

1 助産所評価申請要項
助産所評価に関する申請手続きは、次のとおりです。
1)申請の資格
助産所とします。2010(平成22)年度は、分娩を取り扱う有床助産所とします。

で、いわゆる無床助産所の自宅分娩専門、出張助産師というものは対象外になるということなので、ここで同時に無床助産師が提携を持たないで開業できるという問題も強調したいとおもいます。
以前のMRIC by 医療ガバナンス学会でも書きましたとおり、

(2)嘱託医の要らない出張専門の助産
 産婦人科科医に限定されるようにはなりましたが、まだ問題は残っています。その内の一つが、嘱託医の要らない開業もあるということです。開業助産師にも種類があり、大きく分けると(1)助産所を開業する助産師、(2)母乳ケアの専門の助産師、(3)出張(主に自宅出産)を専門とする助産師になります。更にこの(3)も二つに分かれ、(3)-1妊産褥婦は助産師の自宅で健診を受けられる、(3)-2妊産褥婦は健診も自宅で受けるとなります。(3)-1は(そこで分娩はしないけれど)助産師宅が助産所ということになります。(1)と(3)-1の場合は嘱託医を持つことが開業の条件となりますが、(2)と (3)-2は嘱託医がなくても開業できます。(『厚生労働省:医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 第4回資料』 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/06/s0608-11/2a.html ※9をご確認ください)
 (2)に関しては緊急性がないだろう内容からして理解できるとしても、(3)-2の場合、出産を請け負うことには変わりないというのに、何故嘱託医が特に必要ではないとされているのか、その理由が全く理解出来ません。日本助産師会の方でも(3)-2の形式で開業する場合も嘱託医を持つように指導はしているそうですが、徹底はされていないようです。疑問を持つ各地域、市町村もあるようで、判断はそれぞれに任されている様子です。神奈川県横浜市では出張専門助産師には法律上の規制がないため、嘱託医師・嘱託医療機関との連携の確認が難しい現状から助産所開業の助産師((1)と(3)-1)のみに開業を許可しています。(『横浜市 市民局 広聴相談課 「市民の声」の公表(詳細)』http://cgi.city.yokohama.jp/shimin/kouchou/search/data/22000330.html*1

というのが現実です。但し、横浜市は今は無床専門の助産師の開業を許しているのか、上記の「市民の声」は削除されています。以前にも日本助産師会には「何故、同じように出産を扱うのに、無償だと嘱託医は要らなくなるのか?」と聞いたら、日本助産師会自体は「無床であっても、嘱託医を持つように指導はしている」ということでした。もちろん、日本助産師会厚労省ではありませんから、厚労省が出すのが答えということになるのでしょうけど、厚労省にこれを聞いたときには全く明確に問題を把握している気配は皆無でして、また、問題を感じようとする姿勢すら感じられません。電話に出てくれるような方は決定権に遠い方ばかりでしょうから、会社として考えれば「責任者不在」でスルーされるだけの話にしかしてもらえません。でも、ガイドラインまで発行している助産師会が問題に感じる気持ちがあるのなら、自ら厚労省に「出産を扱うということは、有床も無床も責任は一緒」として、改善をしていって欲しいのですが、大切なのが母子の安全なのか、それとも仲間たちのやりやすさなのか、その答えが今でも「嘱託医を持たなくても開業できる方法がある」ということにあると思っています。
と、ここで最初の「安全確保のための体制・手順」の

医療法第19条に基づく嘱託医師及び嘱託医療機関との連携が整っている。

に戻しますと、ここではあくまでも有床助産所についての連携の整いについてのみ言っているわけです。ですから、その下の

自宅分娩等、在宅支援を行う場合の安全が確保されている。

は、あくまでも有床助産所で出張もしますよ、という場合の自宅分娩に限ることです。在宅支援というのはこれは分娩後のケアかな? え? あ、あれは在宅支援なのかと思いながらこちらを>助産師が行う出産 ・ 育児支援活動の条件整備に関する要望書。これは平成18年に出されたものです。病院での助産師の活躍よりも、病院の外での方が助産師の方たちには仕事と思えることが多いらしく、育児支援に関して言えば、病院でも助産師不足が生じているというのですから、保育士の資格があっても働けないと言っている保育士の就労先不足を補うために、ここは保育士さんに任せた方が良いように思いました。助産師会の方たちは、自分たちのやりたいことにはすぐに要望書を出しますが、先の通り、無床専門だと嘱託医が要らないという矛盾以上の問題にはなかなか要望書を出してくださらないようです。出されていても厚労省が無視する、ということでしたら、もっと強く抗議をすべきではないかとおもいます。

次の

助産所業務ガイドライン及び遵守すべきものに沿った助産業務を行っている。

に対しての

医師と共同管理すべき妊産婦・新生児の基準と対応の記載資料

というのは、ここも不安が過ぎりましたが、共同管理すべきというのは、一応念の為にですが、異常があったら病院ですよね? 「とりあえずは助産院で大丈夫そうだけど、ちょっと気になるね」っていうのも、最終的には医師が助産院でも大丈夫だよってGoサインを出しているようでいて、実際はどうなんですか? だって、陣痛きたから助産院に連絡しましたとかっていうのって、もしも問題が少しあるかもしれないっていう場合は、本来ならば、陣痛がきたから一度病院に行きました、そしたら懸念していたことは避けられそうだったので、助産院でも大丈夫そうだねって言われたからそこから助産院へ行きましたっていう内容は世に出てきていない気がするのですが、どうなんでしょうかね、想像するに、やはり助産師が診断を下しているっていうことも横行しているのではないだろうか? っておもいました。あと、本当は一ヶ月検診も助産師がやるのって、診断を下す権利を与えていませんかね? 本当はここら辺も整備すべき問題があるんですけどね。

さらに...ガイドラインに遵守する姿勢は非常に大切ですが、私たち産む側が知っておくべき問題は、「ガイドラインが全てではない」ということです。ガイドラインには曖昧なままの問題もあります。

次は

分娩件数の報告や転院/異常報告を適切に行っている。

と、

助産師会に報告した母体及び新生児の転院/異常報告書

ですが、ここに「死亡報告」がないのはずるいです。あるべきです。異常報告で終わらせる卑怯さが許せません。死亡しているのを異常では度が違いすぎます。いや、むしろ、死亡しているという異常事態が起こっていることをきちんと伝える役割も、この評価の中ですべきです。常にその責任の重さを自覚する必要があるはずです。

次は2-3で

事故への責任と対応

です。中で一番気になったのは

医療事故への対応に必要な対策をたてている。

のところの

産科医療補償制度の加入証の写し

です。これは産科医療補償制度に加入していれば良いのではないはずなんですね。ここはこれから十分に検討と対策を必要として欲しいところですが、以前に複数の産科医の先生から「助産所や自宅出産の場合、産科医療補償制度のために胎児心拍モニター(についてはこちらを是非)の装着はどうなっているのか?」という質問を頂いたことがあります。何故そのような疑問になるかというと、この補償に加入するのには3万円を支払えばいいわけですが、実際に補償を受けるために申請するには、胎児の心拍モニターの装着があったことが条件のようになっているからです。それで私も気になって日本助産師会に確認したところ、「心拍モニター装着をするように指導している」とは仰っていました。しかし、実際にはそれが全箇所で行われているという結果には至っていません。実際に、自宅出産で3万円支払ったけど、そんな器具は一切持ち込まれていなかったという方もいます。そのため、私はこのことについて日本医療機能評価機構に電話して質問しました。そのときに産科医の先生に出したメールを下記にそのままに記します。ちなみに、文中のNSTは胎児心拍モニターのことです。

最終的な結論から申すと、加入して請求する側と立つ開業助産師がNSTを持たないことは問題ないということです。
まず第一に、1つの条件としてある「3週以上、2000g以上」が満たされていれば、NSTの記録なしだからといって補償対象しないとはならないということです。
仮に、33週以前で28週を上回っていれば、所定の条件を満たすことで補償の対象となるが、そのときの所定の条件が「NSTの記録」か「臍帯動脈血ガス分析値」のどちらかになるので、そのどちらかがあれば良いのだが、「そのどちらも助産所では難しいですよね?」と問うたところ、「基本、開業助産師はリスクのある方は請け負えないので、そういう方は病院へ搬送されての出産となるので、病院で取れれば」ということでした。
なので、助産師がNSTをとれるようにしておくのはベターだけれども、持っていなくても構わないし、持っていない人が加入しているのも問題ないということでした。
なので、開業助産師が持つように推奨することもないそうです。
う〜ん、正直、産む側にとってはなんらメリットのない話で納得いかないのですが、確かに「正常以外は扱えない」となると、仮に正常だったのに脳性麻痺となった場合も、それも33週で2000g以上の赤ちゃんだけしか助産所からの申請はないということしか想定されていないということですよね。
もしも私が伺って参考に出来るご意見あったら、是非伺いたいです。

ということで、世の中これに限らずですが、写しがあっても意味がないことも多い、と思った方が賢明という感想が私のものです。この産科医療補償制度に関しての問題は、これからも注目していきたいし、今年は見直しの年と聞いていますので、開業助産師に対しても、胎児心拍モニターの装着の義務化をお願いしたいです。有床、無床関係なしに。


続く
〔なんか、シリーズ化っぽくなっちゃってますけど、実際には一言、「こんなのに意味あるんですか?」で終わらせてしまっても良かったように思っています。ただ、こうやって出張専門だと嘱託医要らないとか、産科医療補償制度に対しての問題とか、そういうのも併せて考えられるのでって、なんで助産師の方たちがこういうのを問題に思わないのかが非常に疑問と不満! 母子の安全を考えているって、本気でそう言えるのかな? 自分たちの専門分野である出産の場に対してだってこれほど杜撰な状態なのに、なんで育児とか思春期とか、それこそ更年期とかまでに自分たちの活動の場ばかりを拡げようとしたがるのかが全くわからない。
普通、自分の仕事を終えきっていないのに、次から次へと新しかったり楽しそうだったりすることばかりをやろうとする人は、まず「使えない人」にランクインですよ。上司からあれやれ、これやれって言われてアップアップってことはあるけど、自らやりたがるのとは別。それは意欲的っていうのではなくて、責任感は薄く、社会貢献の意識ではなく自己中心的で傲慢なだけ。
更には会陰切開や縫合? ちょっと待ってよ、本当、何考えてんの? ってね、言いたくもなります。
ホメオパシーや民間療法との関わりの問題も、結局はしっかりとした監督・監視がなされていない。だから、今でも切っても切れない? 助産師とホメオパシーという問題まで出てくるんじゃないんでしょうか。ね?〕

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*1:現在はこの「市民の声」は削除されています