胎盤食について

胎盤を食べる」ことはビジネスにもなってきています。
プラセンタ(胎盤)カプセル
健康で幸せなマタニティーをお手伝い
でも「胎盤は、とりあえず冷凍庫へ」として案内されています。
「プラセンタカプセルの効果」を読んでいると、まるでホメオパシーのようではないですか。母乳の問題もクリア、自分のストレスも体調もクリア、でも「子供のストレス予防」などと言われちゃうと、ついつい気になっちゃう…なんて方もいるでしょう。
胎盤を食べることについては何度も書いていますが、「昔は胎盤を食べていた」というような話を歴史上の正しい情報として得ることができずにいるというのに、食べていたと言い続ける方もいるので、産む側がこういう情報に惑わされないために勉強というか、興味を持つ必要があるとおもっています。
私自身は琴子を産む頃に「胎盤を食べる」ということに出会っていて、助産院で出産した友人は実際に食べていました。その助産院の助産師は当時の栃木県の支部長でしたので、「そういう助産師がいうのだから正しい行為だ」とおもってしまったのも否定できないとおもいます。(自分自身もそうですが、その友人も)


胎盤を食べていたと言う方達の中から聞こえてくる主な“食べる理由”は

  • 胎盤を食べないのは人間だけ」として、動物であるならば当たり前の行為
  • 母乳の出が良くなる
  • 産後の肥立ちが良い

というものです。動物が出てくると、助産院や自宅出産を選びがちな方に多い「自然の法則と聞くと従いたくなる心理」に大きく作用しますから、「そうだよね、犬も食べてるもんね!」とか、よく聞きますよ、リアルに。自分が犬ではないことを忘れてしまう。じゃぁ、普段から犬のように道ばたに落ちているものを食べているのか? 泥水飲んでも平気なのか? というところや、それこそ、無事に産まれたお子さんのしつけにおいて、食事中のマナーとして「犬食い」を許すのでしょうか。「犬(動物)がしているのだから私たちもやった方が良い」というのはおかしな話。産む側にいるのだからこそ、こういう妙なトリックに気をつけて、気がついて欲しいのです。

ここで、胎盤に関する論文を一つご紹介します。
昨年に「胞衣をめぐる状況の変化と意識変容」という、とても興味深い論文が出されていたことを、ある方より教えていただきました。

に掲載されているものです。
※この論文の中で、胞衣(エナ)と胎盤の表現について

「後産」に対する意識の違いがあらわれている。

とあります。論文中では「胞衣」で表現されることが多いのですが、私は以前より「胎盤」でお話していることが多いので、私の発言においては「胎盤」と表現させていただきます

上記の論文を拝読し、まず最初の感想を一言で表すと
胎盤を食べていたことにしたい人たちがいるのだろう」
というものでした。読んだのが半年以上前だったので、そのときの感想のままではいけないとおもい、再読。そして、結果は同じでした。
論文の執筆者である濱千代早由美氏によると、

胎盤を食べるという行為は、『日本産育習俗資料集成』や自治体史等を参照しても、それに類する記述は見当たらない。

そうです。
これは私も申しているように、どれだけ調べても、胎盤を食べるという文化が日本にあったという記録はないんですね。
「類する記述は見当たらない」とされていたのですが、濱千代早由美氏ご本人の高校時代の教師から授業中に

「胞衣を食べる」という話を聞いた。

そうで、理由として

「栄養価が高いからだ」という「科学的」なものだった。

とありました。発言者が「栄養価が高い」と捉えていただけのことで、高校時代の教師だからといってそれを科学的に立証したとはならないとおもうのですが、こういう論文で「科学的」なものだったと書かれちゃうと、そう信じちゃう人もいるとおもいます。ここで「科学的」とおもったのはあくまでもご自身の、個人的な感想でしかないのではないでしょうか。

論文では他に、内田春菊氏、石坂啓氏、さくらももこ氏の描いた漫画の話や、雑誌などで扱われたプラセンタの話などが出てきます。「食べていたと聞いた」というような話も少しできます(確証される本人談はない)。胎盤は誰のものなのか? と考えることや、カニバリズムで猟奇的とされている意見の紹介もあり、賛否両論を並べて検証されているような部分もありました。

常にですが、漫画で扱われたことだけで一般論のようにされることには抵抗感があります。売れるためには刺激的な話題をあえて扱うことも多いでしょうし、本や漫画で題材にされたからといって、正しく、事実に基づくような証拠になるわけでもない。
特に、胎盤を食べることについては胎盤を持ち帰ることは良いのか? 医療廃棄物としての扱いなどの問題もあります。自分のものだと主張するべきなのか? 奥深い問題を感じますね。

母乳の出や子どものために胎盤を食べるー母乳は出てくれた方が経済的にも助かるし、出ないよりも出た方が良いとはおもいます。理想という意味で。でも、出ないで悩んでいる方に「出なくちゃいけない」みたいに言うのはおかしいし、結局、胎盤を食べてでも出せってことなのかな? とおもうし。ただ、これをきちんと科学的にどなたかが実験とかデータをとってくれれば、胎盤を食べても出ない方もいるのではないでしょうか? 昔の人が行っていたからって、それが現代社会においても重要だとはおもわないし、戦争中の食べ物がないという時代に母乳が出なくて悩む話はたくさん聞くけれども、「だから胎盤を食べた」という話もない。胎盤を食べていたと言う昔話が本当だとしたら、何故、あの頃にそのようなことが復活されたり見直されたりしなかったのか? ここら辺の資料があってもおかしくないとおもうんですけどね。