母の病

私くらいの年になると、両親の病気を心配することの方が多くなる。

両親が健在というだけでも感謝するべきなのだけど、元気でいる日常が麻痺させて、元気でいることを当たり前に感じさせていた。


私の母が病に倒れた。

といっても、命に別状はなく、きちんと治療すれば、予後もそんなに心配ではないらしい。

ただ、このきちんと治療というのが難しい性分の人で、もうすでに自営の仕事に復帰し、全然休んでくれない。

元気でいることが当たり前過ぎたせいで、今まで心配されなかったせいで、心配される日々がくすぐったいのか嬉しいのか、休めと言えば言うほどに動いてしまっているようだ。

同居している父も弟も、母が動くことを止めようとしない。


遠くに住んでいる私にはなにもしてあげられない。

だから、「頼むから寝ていてよ」なんて、言葉だけの心配でしかなく、やっぱり頼りない。


前までは「親が死んだら…」と、いつかくる未来に不安や寂しさを感じるばかりだったけど、琴子の死を迎えて以来、「親よりも先に死なないようにしたい」とおもうばかり。

勿論、今回も母の病の知らせは寂しく、また、治癒してくれればと願うばかりなのだけど、母が口癖のように

「ここまで生きてきたんだから」

と言うので、私も

「好きに動いてください」

と、結局そう言ってしまう。



私も年をとるわけだ。