夫婦それぞれ

リンズは県下、一番大きくて設備の整ったS会病院で生まれました。

琴子のときの経験から、私達は最初から総合病院での分娩を決めていました。


リンズは吸引分娩です。

臍の緒が二重に絡まっていたそうです。

リンズは会陰切開です。

頭が大きかったとかで、5センチほど切りました。

このお産には何も不満がありません。

何故なら、リンズが無事に生まれてくれたからです。


先日、旦那に私のこの日記を読んでもらいました。

最近、パソコンで一生懸命に何かやっているから、何をしているのかと聞かれました。

何をしてるって、琴子の話をしているんだよと。


旦那は日記を一日分だけ読んだきり、それ以上読むことは出来なかったようです。

夫婦でも癒し方は別です。

私は今、こうやって気持ちを表側に出すことで、少しずつ痛いけど、少しずつ癒しています。

荒療治。

旦那は今、言葉には出さないけど、毎朝お線香をあげて、お水をかえて、心の中でメッセージをおくっているようです。


リンズを産むまでの妊娠期間中、旦那は私と一緒に辛い気持ちを味わっていました。

私の場合は『今度は上手に息めるか』(註:琴子が亡くなった時、H助産師に『息むのが下手だった』と言われた)に関したこと。

夫の場合はお腹の子の命と、私の命。

琴子のくれたご縁により、奥さんを亡くされた方にも数名、出会いました。

原因が様々な上、私の経験に重なる方はいませんでしたが、まさかとおもった結果を得た経験上、まさかと楽観視できることがなくなってしまいましたから。


旦那の中では琴子は別格だそうです。

私とリンズとは全く別の位置にいるそうです。

私も同じです。

でも何かが違うのです。

琴子のことを想う気持ちは同じなんだけど、違うんです。


琴子の2歳の誕生日に向けて、プレゼントを買おうと出掛けたときも、意見が別でした。

私は2歳なら外で遊ぶだろうから、砂場で使える子供用のシャベルのセットを選ぼうとしました。

旦那は「女の子!」というイメージの強いものが良いと言って、ぬいぐるみを探していました。

ぬいぐるみはたくさんあるからという説得で、旦那が折れてくれました。


夫婦それぞれなんだけど、琴子への想いは同じです。

琴子には生きて欲しかった。

でもそれが叶わない結果の日々を迎えている今は、せめて天国で笑顔の日々を送って欲しい。

琴子、そちらも秋になりましたか?