Ai(死亡時画像診断)

当ブログへコメントくださるかとうさんから、これから出産をされる方へのご意見です。かとうさん、ありがとうございます。

かとうです。
最悪の事態が起きた直後の直後の話ですので、聞くのも嫌な方もいらっしゃると思いますが、やはり大事な事なので書かせて頂きます。
死産や、赤ちゃんが亡くなった時の死因を特定しておく事は重要だと思います。その為に必要なものが解剖です。
その死の直前、赤ちゃんが一生懸命に何と戦っていたのか、運命でやむを得ず天に帰って行ったのか、何かしてあげられた事があったのか、それらを理解してあげる為にも大事です。
死因が解剖で明確になると、「何故、赤ちゃんは死ななければならなかったのか?、どのタイミングで、どのようにしていればその可能性は減らせたのか?」を考察する為の重要な情報になります。
それらが解らないと次の子の時にどうしてあげればいいか、自分の次の子じゃなくても、親戚、友人達と教訓を共有する事で天使ちゃんが一人でも減る事になります。
しかし、亡くなった直後にそれを薦められてもなかなか納得出来ないので、普段から考えておいて欲しいです。

もし、山口の赤ちゃんが具合が悪くなった時に病院には行かず、そのまま家で看取られたとすると、ビタミンK2欠乏での出血が原因だった事が解らず、ビタミンK2シロップを与えれば大丈夫だった、K2シロップには意味が無かった等が解らないまま、荼毘に付されていた事になります。
実際のこの件は、病院のNICUでお医者さんが全力で治療にあたって頂いてましたので、そのお医者さんがどんな病気かを把握出来ていたから、何が悪かったかが明白になり、それがあったからこそ、訴訟で速やかに和解に至る事が出来ました。

自宅出産や助産院での死産や子育て中の突然死等、病気として医師に診てもらっていない時の死亡は、何故亡くなったか解りません。
しかし解剖所見があると、そのお産の時、子育ての時の行動を本人や立ち会った方の話と合わせる事で、より正確に何が起きていたのかが解り易くなります。
そういう正確さがあるため、訴訟になった時、解剖所見は重要な証拠となります。
その様な重要な解剖ですが、荼毘に付してしまったらもう二度と行う事は出来ません。
しかし、ほんの短い間、しかもお子さんを亡くした直後に解剖という赤ちゃんにもう一度苦痛を味合わせるかの様な、切開をする事、この様な事を考え決断するのは本当に大変です。
死亡診断書を書いてもらう為、医師の所に一度運ばれますがそこで解剖をお願いしてください。
心を切られるより痛いお願いですが、亡くなった赤ちゃんと共に歩むには、必要な事です。

最近、新しい解剖に置き換わる概念が考えられています。
Aiと言うものです。
もし、お近くの病院でAiを導入されている所があれば、そこでお願いするのが一番いいです。
Aiとは、みなさんが病院で診てもらっている時に使ってる、CTやMRI、エコーの検査を、亡くなった方にも行い、その画像所見で死因を診断し、また画像を見てここがよく解らないもっと細かい検査が必要だという事になれば、解剖を行うというものです。
これらの画像検査を最初にする事で、より正確に死因が特定でき、また画像診断の時に死因が十分解れば、解剖は無しですませられる事で、綺麗なままの遺体が引き取れるかもしれません。
Aiはまだまだ普及していませんので、なかなか出来る病院はありません。今後の普及を願います。
これらのAiについては、映画にもなったチームバチスタの栄光を書かれた、海堂尊先生(作家だけじゃなく、病理医をしていらっしゃいます)の、「死因不明社会」と言う講談社ブルーバックスに詳しく書いてあります。

今回かとうさんがこのご意見をまとめてくださったのは、ツイッターツイッター以外でも色々とあるのですけど、最近はこのケースが多いですね)で助産院や自宅出産で悲しい結果になってしまったときに、訴訟をしたくても証拠がないということもあるのでは?というようなことで、私から一つの意見としてお願いを致しました。
数年前になるとおもうのですが、テレビでAiの紹介を見た記憶があります。それ以後に現在までどのくらい普及しているのか、かとうさんのお話からだとまだまだ出来る病院は少ないようです。
助産院や自宅出産をする方には余計に解剖というのは縁遠いことだとおもいます。多分、助産院や自宅出産で搬送されずにお子さんを亡くされた方がその場で「解剖します」とは言い難いとおもうんです。搬送された先だと、搬送を受け入れてくれた病院の医師の方から解剖するか否かの希望を聞いてきてくださることもあるかもしれません。
親としてどうしたらいいのか、その場ではすぐに答えは出せないことの方が多いとおもいます。でも、何もないうちから考えておくことは、先日の出生前診断の話とも同じなんですが、とっても大事なことだとおもいます。解剖するかどうかは悩んでおくというより、こういう手段もあると、情報を頭に入れておくことですね。
Aiについての情報としては
うろうろドクターさんのブログにもありました>CT(Ai)も解剖も、死因の推定に有用ですが、限界があります。
著者ご本人のサイトも>海堂尊公式ホームページ法医学とAi、そして厚生労働省Ai 検討会の顛末
他にも…

と、検索すると沢山あります、これ以上に今は読んでいる時間がないので、私からの紹介はここまでですが、費用の面なども含めてどっさりと情報がありますね。

『踊る産科女医』

LUPOさん原案・監修の『踊る産科女医』を読みました。マンガ家の吉川景都氏が助手となって、性教育として、妊娠・出産に必要な情報をコミカルにしつつ、しっかりと教えてくださる内容でした。

  • 出産には危険が伴います!!
  • 下から産みたい!? 帝王切開について

などでは自然出産に魅了されがちな私たちにしっかりとご意見くださっています(基本的にどの問題、テーマにもしっかり、はっきりで気持ちいいです)。そして、出生前診断についても。
更に、妊娠出産では避けられないこともある、子供を亡くすということもきちんと描いてくださっています。

それにしても、稀なんでしょうけど、色々な人柄があるのだなぁと、随所にちりばめられたトンデモない患者話にも興味を抱きながら、あっという間に読み終えました。
「子供の性教育に使いたい」と仰っていた方達が数名いらっしゃいまして、私もそうおもいました。「セックスに避妊が必要だとは…」というような妊娠してしまった女子高校生の話も少しだけありましたけど、それに激しく驚きながら(私が学生の頃は、まだ“不純異性行為”という言い方されていて、たまに「妊娠しちゃった!」っていう人の話は流れてきたけど、「セックスしたら子供出来ちゃうから、避妊しなくちゃ」の方が身近な情報だったように思い出すのですが…)、実際に病院に子供を連れて行ってこんな風に気さくに話をして頂くことは難しいので、私もリンズが必要な年頃になったら読ませようとおもいます。
それまでに是非、もっともっと必要な情報をと、続編も希望しています。

「うさぎの助産院」

TENさんから教えていただき、雑誌のYOU(2011年 No.5)を購入し、“ハートフル読み切り”として紹介されていた「うさぎの助産院」という、マンガ家のくりた陸氏のものを読みました。監修は助産師の土屋麻由美氏(麻の実助産所)とあります。

まずTENさんのご感想を

主婦向けの漫画雑誌「YOU」の今週号(5号)に自宅出産を請け負う助産所を描いた読みきり作品が掲載されています。(実在する開業助産師さんが監修をしておられます)

自宅出産を選ぶのは二人目を産む主婦。
その決断の理由は、入院中子どもを実家に預けずに一緒にすごしたいから、ということ。(実家の母が「赤ちゃんが生まれたらお前は邪魔なんだよ」という言ってはならない一言を上の子に言ってしまって以来子どもが情緒不安定気味になっているーという設定です)

これだけならまだよかったのですが、それ以外にも彼女が自宅出産を選ぶ理由が挙げられ続けます。前のお産で独りきりでずっとモニターにつながれていた末に担当医が「まだ生まれないのか。これから会議なんだよ」ってぼやいているのを横耳に挟んだこと、そして彼女が助産院を選んだ最大の理由は家族3人揃って赤ちゃんを和やかに迎えたいーということだと途中でわかります。家族が赤ちゃんと一緒に微笑んでいる写真が彼女の最大の憧れであり、そんなお産をしたいということが彼女の願いだったという描写が出てきます。

(今どき夫やきょうだいが出産に立ち会えて、出産が無事すめば笑顔で家族写真を撮影できる病院なんて探せばいくらでもあるのに、作品内では自宅出産じゃないとそれが出来ないかのようにもとれる描写です)

請け負う開業助産師は「私もふたり目は自宅出産にしました。そこのソファで産んだんですよ」と誇らしげに妊婦に告げます。その後は「女性は誰に教わらなくても本能で子どもを産むことを知っている」とか「お産は太古の昔から女性が普通にやってきたもの」とかという決まり文句を始め、“助産師による出産だと会陰切開しないから血だらけじゃなくてきれいなのよ”、ってやりとりまで出たあげく、作品の最後の締め文句が

「トライしてみませんか?おうちで出産」  ですよ!・・・とことん呆れました。

「トライしてみませんか」って言われてトライした人やお子さんが亡くなったら、出版社や作者はどう責任をとるつもりなんでしょう。自己責任、って言うのでしょうか。

作品中には自宅出産を選んだ場合母子の死亡率がどれほどアップするのか、母子の死亡率なんて一切記述がありません。作品中で開業助産師自身が妊婦に告げたリスクらしきものは「お産までに病院の検診も何回は受けていただきますし何かあった場合は医療の力を借りる場合もあります」という言葉のみ。その後の助産師同士の会話で「経産婦で経過は良好、体重管理も出来ていて問題なし」なんてやりとりが描写されていて、「自己管理できている妊婦なら問題なし、病院の検診を受けてればいざという時には病院に連れて行ってもらえるから安心なんだな」という印象を読者に与えています。この作品を監修されている開業助産師さんもこの程度のリスク説明しかされていないのだろうか?とすら疑ってしまう内容でした。

「YOU」は取材のあまり行き届いていない産婦人科開業医漫画を長期連載してきた前科はあるものの、最近は婦人科の様々な病について患者たちに丁寧に取材して漫画化した作品を産婦人科医の監修&解説エッセイつきで連載するなど、産科医療に理解のある雑誌だと思っていただけにショックでした。

先ほど読み終えたばかりなので考えがまとまりませんが、編集部宛に抗議文を書いてみようかと思います。助産所を舞台にした漫画を掲載すること自体に反対するつもりはないのですが、一般的な病院でのお産とは明らかに母子のリスクが高くなる決断なのですから、リスク情報も提示せずに薦めるような内容、しかもよりによって危険性が高い自宅出産を薦めるのはあってはならないことだと考えます。こういう作品を載せるのなら、自宅出産や助産所の出産で理想のお産が出来なかった産婦さんのケース、あるいは大学病院で急変して担ぎ込まれた妊婦を懸命に救う産科医の姿も描かなくてはフェアではないと私は思います。(私は特に後者のタイプの漫画は大勢の主婦に受け入れられる素地があると信じています)

私もTENさんと一緒に…
「お産は太古の昔から女性が普通にやってきたもの」
だけど、沢山の母子が亡くなっていることでもあるのよ。』が正確で、「女性は誰に教わらなくても本能で子どもを産むことを知っている」のだったら、助産師もいらないじゃないか! もう本当にどうしようもない。この繰り返しですね、こういう問題は。
そして助産師による出産だと会陰切開しないから血だらけじゃなくてきれいなのよ”これは酷いですね、会陰切開が必要な医療行為というよりも、過剰な医療行為という印象だけを植え付けたいのではないでしょうか。
(今どき夫やきょうだいが出産に立ち会えて、出産が無事すめば笑顔で家族写真を撮影できる病院なんて探せばいくらでもあるのに、作品内では自宅出産じゃないとそれが出来ないかのようにもとれる描写です)って、本当ですよね。もうこの辺の特典は助産院、自宅出産だけのものではないとおもいます、院内助産院ではなく、病院でも立会いも記念写真も出来るとおもいますね、特別に問題がない限り「うちでは駄目です」というところを探すのが難しいほどではないでしょうか。それよりも、帝王切開でお母さんが産声を聞けないという場合には録音して後で聞かせることを協力するとか、もっとハートフルといえることが病院にあるようにさえおもいます。

この作品を監修されている開業助産師さんもこの程度のリスク説明しかされていないのだろうか?とすら疑ってしまう内容でした。そう感じてしまわれるのは当然だとおもいますよ、ご自身のサイトでもこの漫画を紹介していますから、その内容に「私の指導した内容と違って、肝心なことが抜けている!」となっていれば、宣伝どころか抗議になっているはずですから。

ちょっと余談ですが、ついでに…この漫画では嘱託医のことが健診のところで触れられる程度ですが、この漫画では出張専門助産師が助産所を持っているという設定ですよね、この場合は嘱託医が必要です。監修された助産師自身のサイトを見ても、ご本人も出産に関しては出張専門のようで、そして母乳ケアもしている。母乳ケアだけだと嘱託医は不要です。出張専門の場合がタイプ別になるんですが、健診までも含めて全て妊婦の家でするなど、助産師の家(助産所)を一切使わない場合は嘱託医は不要です。出産は自宅(助産所外)だけど、健診は助産所助産所としていなくても、助産師の自宅であれば同じ)でも出来ますとなると、嘱託医が必要になります。このような差別化は本来、全く不要におもうのですが、何故かこの法律に甘んじている助産師が多い。まぁ、開業権があるのだから嘱託医が必要だということ自体がおかしいのだという方もいるくらいですから、なかなか改正してもらえないのですね。今回の監修している助産師の方は、嘱託医を持たれているようですね。

あとですね、お金の話もありましたけど、病院の持つ設備や人員などなどと比較してください。助産院や自宅出産は安い? いやぁ、子供(母親も)がリスクに晒されることを考えても、とっても割高とおもいますよ。
「トライしてみませんか?おうちで出産」  ですよ!・・・とことん呆れました。私もですよ、TENさん。言葉の感覚からして、まるで遊びなんですよね、ロシアンルーレット。「出産そのものが賭けでロシアンルーレットじゃないか」と、自然分娩万歳系と私は見ている産科医の方がそう仰っているのをその後に目にしましたが、ロシアンルーレットは度胸試し、悪趣味なゲーム。なるべく安全に、何よりも子供の無事をと願う母親に使われるべき言葉だとは私はおもわないのです。だから、出産そのものをロシアンルーレットだとはおもわない。「トライしてみませんか?」も。VBACはこの要素が多いんですよね。

しかし、ここまで能天気な内容を今?…それも産む場所が減っているというような問題に触れつつ描くことに、「自分達の出来ることの限界」は理解していらっしゃらないのだろうとおもいました。
今日は本の紹介シリーズになりましたが、この漫画に関しては読んで欲しいとかではなくて、殆どTENさんへの私信です。読まれなくてもというか、読まんでよろしです。

TENさん、抗議されました? 一番の問題はこういう感覚の助産師が開業しているってことなんですよね…。助産師会にも抗議した方が良さそうですね(助産師会に加入しているのは確認できました)。後日になりますが、私も抗議します。TENさん、有難うございます。