赤い糠蝋

琴子が眠るお墓のあるお寺さんに、感謝の気持ちも込めて、“何か”を寄進することにした。

ある方からご助言頂き、素直にそうしたいなぁとおもえた私達夫婦は、早速何にするかを話し合った。

ご助言くださった方は

「お座布団でもいいし」

と言っていたそうなのだが(直接聞いたのは旦那)、数年前にお寺を大幅に修繕したと聞いているので、座布団はまだ奇麗なような気もするし、座布団が適当としても、もうちょっと琴子らしいものがいいなぁと言うことで、で、で…う〜ん、どんなものがいいのだろう、どんなものが琴子らしいのだろうと、なかなか良い案が浮かばない。

じゃぁ、ちょっと悩むのをやめて、パソコンを起動して何かしようかとおもって、最初は“寄進”とパソコン起動は繋がっていなかったのだけど、何気なく“寄進”を検索してみたら、最初に見たサイトでいきなり【糠蝋】がヒットした。

これ、凄いんです。

凄く感動しました。

というのも、実はこの糠蝋、琴子が亡くなって数日後に来てくれた知人がくれていったものだったんです。

「女の子だって聞いたから、蝋燭も可愛い方がいいかなっておもって…」

と言って差し出してくれたあの光景を、今でも鮮明に思い出せます。

嬉しくって、すぐに使ったんだけど、ちょっと勿体無くって、控えめに使用しようとなり、飾りのように置いていただけでした。


ある日の朝…そう、あれは納骨が終った後、納骨の翌日のこと。

旦那が目を赤く腫らしながら、

「琴子の夢を見た」

と言うから、私はどんな夢だったのか、琴子がどうしていたのかを聞いたら、

「あの赤い蝋燭をとっても気に入っていて、玄関で灯して遊んでいた」

って。

あぁ、ここまで書いている今でも泣けてくる。

そう、とっても嬉しかった。

琴子が喜ぶことがあるなんて、それを知ることが出来るなんて、親として、とっても嬉しかった。

「そっか、じゃぁ、あの蝋燭を灯して欲しいんだね」

と言って、夫婦ですぐに玄関であの糠蝋を灯し、最後の最後まで、ずっとずっと泣きながら

「喜んでいるよね、琴子も一緒にいるよね」

と言っていたことを…まるで今朝のことのように思い出せる。


これもご縁なんだろうな。

また琴子があの糠蝋が欲しいって、きっとそう言ってくれているんだろうな。

もう即決。

座布団と糠蝋を寄進します。