11/3『助産院は病院ではない』より

当ブログ11月3日の『助産院は病院ではない』にお寄せ頂いた皆さんからのご意見、有難うございます。

中にありました“同じく大学病院医師さん”のご意見を強調したいので、この場にて、改めて紹介させてください。


同じく、大学病院勤務医です。

多くの病院勤務の助産師と、開業助産師は全く違うコンセプトを背負って活動しているように感じています。前者は、「お産は何がおこるかわからないし、母児ともに元気に分娩を終えることが最大の目的なので、必要な医療介入の時期を失することのないように監視を怠ることなく、その中で産婦の快適性、自律性を守っていく」というものであるのに対し、後者は、「お産はできるだけ医療介入を避けるように導くことが母児にとっての幸せであるし、低リスクの産婦においてそのような自然分娩がうまくいかないことがあっても、例外的なものである」と考えているように思われます。

「正常分娩は助産師の手に委ねよ」とのスローガンのもと、「明らかな異常は見出せないが、このまま自然に経過すれば異常になる確率が高い」というような、いわばグレーゾーンの産婦を「正常の範疇」とみなしてわが手にとどめておき、その中でうまくいった症例のみを自分たちの手柄と喧伝する一方、うまくいかなかった症例は「仕方がなかった」として自身の危機管理意識欠如を認めない開業助産師が確実に存在します。


医療従事者の方と話していて、時々感じるのですが、

『無事に終わったお産』を中心に考えているか、『無事だとおもっていたのに、突然異常になり、悲しい結果に終わったお産』を中心に考えているか。

悲しい結果にならなかったとしても、怖い経験となったことを中心に考えているか。


お産が必ず、悲しい結果や怖い経験となるとは言いません。

確率でいえば、悲しい結果や怖い経験は少ないことでしょう。

でも、誰がいつどうなるかがわからないのがお産だということを知った素人の私でさえ、正常を中心に考えることが『甘い』とおもえてしまうのです。


助産院のHPを見たり、助産師の方と話していると、『無事に終わったお産』を中心にしている方が多いです。

全員とは言いません。

“同じく大学病院医師さん”も言うように、病院勤務の助産師の方の場合は、悲しいお産や怖い経験を中心にしている方が多いようです(私も直接、そう話してくれた助産師の方を知っています)。


「仕方がなかった」として片付けられるのは、私たち産む側の命です。

大事な、何よりも愛しい、子供の命です。

琴子がその一人、といえるとおもいます。

ただ、病院で産んでも、事故でもなく、本当にどうしようもなくて亡くなってしまうことはあります。

「仕方がなかった」という言葉がいけないのだと言うつもりはなく、仕方がなく死んでしまう結果があるということを、私たち産む側が覚悟しなくちゃいけないこともあります。

でも、この場合の「仕方がなかった」は別のことです。


助産院や自宅での出産を決める場合、自分達がするべき覚悟もあるのは当然のことだけれども、助産師とも徹底して、これらの話をするべきです。

助産院の助産師の方が、どれほど危機管理への意識を持っているのか、

『殆どの女性が自然に産む力を持っている』

という言葉で片付けないで、もしも異常が発生した場合はどのような結果になることが想定されるのか、嘱託医が請け負える緊急時の処置はどこまでのことなのか、具体的にどんどん聞くべきです。

もしかすると、「そんなに不安なら、ここで産む資格はない!」というようなことを言われるかもしれません。

だとしたら、そこは中心が産む人ではないんですよ、助産師が中心なんです。

そういうところの主人公は、助産師なんです。

産む側は命を掛けているんだから、どんな不安も疑問も、それが助産院をときには否定するような内容だとしても、納得出来るように協力するべきです。


食事の内容とか、生活習慣の見直しとかも大事だけれども、それは助産院だから大事なことではないです。

病院で出産する場合も、食事の内容や生活習慣の見直しは出来るだけした方が良い。

病院には何でも聞こう、医師には答える義務があると言われる時代になりました。

助産院でも同じです。


産科医療の崩壊に伴い、助産院の活躍が期待されるといわれるようになりました。

私はそうはおもえないのだけれども、そうだとおもっている方に多く出会うようにもなりました…だとしたら、助産院が体重管理や生活習慣の見直しが出来る人だけを選ぼうとするのには疑問を感じます。

もしも産科の減少によるお産難民の救済が出来るというのならば、そのまま、妊産婦を選ばずに受け入れるべきです。

異常を見分ける自信(資格・技術)があるはずなのですから、今以上に条件を緩めて、助産院側の条件・都合ではなく、医療が崩壊したことにより産む場所がないというお産難民の方たちを、そのまま受け入れるべきです。

私は助産院が病院の穴を埋められるとは思えないのですが…


私は自分の経験から、体重管理・生活習慣の見直し・徹底をしても、異常が全く起こらないとはいえないこと、これも同時に主張します。