何故、マスコミは助産院や自宅出産を好むのか

先日、TV局のディレクターで報道番組制作経験ありの女性、出産後は番組作りの一線を退いているという方(以下Qさん)からご連絡を頂き、個メールでご意見を伺わせてもらいました。
私としては、TVで扱われる助産院や自宅出産は美化されるばかりだという批判の気持ちが高まるばかり(最近はどうでしょうか、あまりテレビを見られずにいるので、今現在がどうなのかは把握出来ていません)でしたので、ついつい、マスコミ批判が話の中心になってしまいました。
(Qさんのお言葉のままは緑色です)
Qさん自身、助産院や自宅出産が美化され、賞賛されることに問題を感じているということで、少し期待が持てました。
しかし、なかなかそうも簡単には変わらないというか、結局はマスコミにとって助産院や自宅出産は丁度良いネタってことなんですよね…
Qさん、有難うございます。

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活字媒体は取材した話を本人の了承さえあれば書くことができますが、TVの場合、取材対象が顔出しOKかどうかで企画の採否が
大きく左右されることが多いです。
もちろん顔を隠すなどの配慮は出来るのですが、TV局の価値観は 
顔だしOK>顔を隠す>顔も声も隠す 
です。
重大な案件であればもちろん「顔を出さなくてもOK」ですが、取り上げるべきか意見が分かれるような案件なら顔出しなしなら通らない、ということがよくあります。
話している人の顔が見える、というのはそれだけでものすごく説得力を上げることなのです。
なので顔出しOKの人物には取材が集まります。

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時に、ご遺族の方が顔を堂々と出されて、インタビューに答えられている場面があります。

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マスコミはそれをありがたがりますからご遺族を叩きにくくなる。
そして視聴者もごご遺族が顔出しで涙を流されると公の場ではご遺族を批判しづらくなる。
一方医師側は守秘義務もあって本人がTVカメラに向かって直接弁解することもできない。
こういうのが悪循環を招いていると思います。

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あぁなるほどなっておもいました。
そう、医師側には守秘義務があるから、簡単にテレビや新聞等、取材に応じてあれこれと患者さんについて話すことすら許されていないわけですよね。

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助産院がいつも好意的に放送されるのは、助産院の多くが取材に寛容だからというのも大きいです。
助産師は外来に追われている産婦人科医に比べ時間が豊富ですから、インタビューにもじっくり時間を割いてくれる。
それに開業助産師ともなれば自分なりの「思想」を強固に持っているから語りがうまい。(医師は職業柄学問的な説明になりがちです)

お産を間近で見た経験もないようなTV番組スタッフが
出産という「感動的なシーン」を目にしたらその場の感動の渦に巻き込まれてしまい、
助産院のお産って素晴らしい!」
になってしまうのでしょう。
母子ともに無事であればどんなお産も感動的なのですけれど。
そんな感動の渦の中では助産院でも不幸な転帰を辿る母子がいるかもしれない、という発想にはなかなか辿りつけません。

Y医院がTV局に人気なのも同じ理由ですね。
あそこも院長の個性が強くて語りがうまい。
そして妊婦の薪割りとかスクワットとか「絵になる映像」が撮れる。
そしてお産のシーンを一部始終撮らせてくれる。
大学病院の産科ではこうはいきません。
そもそもトラブルが発生して手術になったら雑菌の塊であるカメラをすぐに手術室に持ち込むことすら許されません。
(予定手術であれば滅菌処理したカメラを手術スタッフに持たせて
撮影してもらうということも可能でしょうがただでさえ医療スタッフ不足の昨今、それを頼むべきかどうかという問題があります)

現在のTV局のシステムの中で助産院や自宅出産等の抱える問題をより公正に取り上げるには適切な医療を受けられなかったという被害者が続出して一般の方の持つ危機感が強まるか、あるいは現状をさらけ出して取材させてくれる(患者側も協力的で守秘義務の問題も全部解決して)大きな病院があれば可能かもしれません。
でもこの医療資源不足の時にマスコミの取材が入ることになればそれが原因で誰かの命を奪いかねない。
(撮影には一定の手間がかかりますから)
だからやっぱり厳しいでしょうね。

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被害者が続出…本当、そこまでならないとマスコミがこちら側を向いてくれないんだろうなぁって想像できちゃうのです。
エコだなんだと言いながら、12月になると民間の家が電飾で飾られることを面白がるマスコミ…期待が出来ないんです。
※そもそも、マスコミが騒ぐエコの在り方にも疑問はありますが…

助産院や自宅出産を取り扱った番組を過去、このブログでも何度か話題にしたことがあると記憶していますが、臍の緒を家族(主に夫)に切らせるのを堂々と流していたり(それも、好意的に)しています。
臍の緒を切るという行為はイベント化されていて、助産院や自宅出産で家族に切らせている数は結構多いのではないでしょうか。
それは違法行為なのに。

マスコミの方の中には問題におもっている方もいるけど、組織として違う考え方が支持されていれば、異論を唱えようにも唱えられないこともあるということでした。
想像や理解は出来なくもないのですが、残念としか言えません。
そして、私たち視聴者側も、やたらと刺激を求めず、真実を知りたいのだということを徹底して伝えていくべきなんでしょうね。
「そういうどうでもいい情報は要らないから!」
というような声を送るべきなんだろうとおもいました。
読まずに…ってこともあるのかもしれませんね。

マスコミにはこれからは徹底して、真実を伝えて欲しいです。
助産院でも自宅でも、実際に母子が亡くなっているわけですから。

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と、ここまでの内容で記事を投稿しようとおもっていたら、さくこさんから下記のコメントを頂きました。
なんというご縁でしょうか、凄いタイミングが合っている!
さくこさん、有難うございます。

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遅れましたが
琴子の母さま
suzanさま

こんにちは
今回の記事を参考に、フジテレビ宛にメールを出しました。kikulogには書きこんでおいたのですが、こちらにお知らせしておくのを失念いたしておりました、すみません

該当の番組はこれです

フジテレビ・どーも☆キニナル!
「出産体験!アンビリバブ− 〜特別編 密着40日自宅出産SP」

メールそのものを保存してはいないのですが(怒っていてうっかりしちゃいました……)、だいたいこんなことを書きました。

・出産には必ず三割のリスクがつきまとう(suzanさんの意見をお借りしました、医師の意見、と書きました)
・何かあったときの搬送の問題、医師との関係がまったく触れられていない。助産師では医療行為出来ないことは知っていたか?
・破水した妊婦は、通常なら即入院して、場合によっては抗生物質投与(細菌感染防止のため)という流れだが、すくなくともこの番組では医師に判断をあおぐような場面は一切なかった。私にはとても危ないことのように思えた。
・自宅出産はまだまだ少ない→家族の絆を深める素晴らしいお産なので皆に知ってほしい、という論調だが、件数が少ないのは危険だからだ。赤ちゃんが亡くなったり重体になったり、という実際に起こっている事故については認識しているのか?
・アナウンサーのコメントも絶賛ばかりで、安全性についてはまったく語られていないというのは重大な手落ちではないか。
・産科医療崩壊寸前といわれている今だからこそ、安易な番組作りで何も知らない妊婦さんたちを危険にさらすようなことは厳に慎んでもらいたい。番組のメッセージ欄にも「自宅出産、私もやってみたい」と書いている人がいた。大変に心配だ。

「新週刊フジテレビ批評」宛に出しておきました。自局の番組を検証する番組、ということなので期待したいところですが、取り上げられるかどうかはわかりません。けれど誰かの目には必ず触れますので、まったく意味のないことでもないだろう、と思います。
寄せられたメールをすべて読んでいる、というのを信用すれば、ですが。

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私はさくこさんのお話の番組を見ていないのですが、今でもまだまだこの程度なんですね…
さくこさんの行動力、意義ある行動を見習いたいとおもいます。
こんな番組内容がまだあるなんて、本当に信じられないです…

Qさん、さくこさん、有難うございます。
これからも、どうして美化されているのかを考えていきたいです。