パブコメへの意見

先日の当ブログ「助産医の問題について ※追記あり」からですが、「保健師助産師看護師学校養成所指定規則及び保健師助産師看護師法施行規則の一部を改正する省令(案)について」への意見募集が2010年12月15日までされています。これは助産師による会陰縫合を法的に認める内容を含めたものです。これについて、いまださんおさママさんから参考となる資料を教えていただきました。

審議会資料をご覧になると、背景がお判りになるのではないでしょうか。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000w9j3-att/2r9852000000w9nz.pdf
(いまださん、有難うございます)

今回のパブコメは一見すると助産師養成に係る必須科目単位数を増やすだけの改正案に対するパブコメ募集のように読めます。
しかしながら、平成22年11月11日の厚生労働省医道審議会内の保健師助産師看護師分科会の議事次第を確認すると、
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000w9j3.html(資料3の9ページあたり)教育内容をよりいわゆる「今後より強化されるべき助産師の役割と機能」にあわせるための改正を含むことがわかります。

「今後より強化されるべき助産師の役割と機能」として挙げられたものの中には下記ののものがあります。

  1. 超音波装置を用いた妊婦健康診査
  2. 医師がいない場での会陰切開及び裂傷に伴う縫合
  3. 医師がいない場での止血等の限定された薬剤投与保健師助産師看護師法の第3条

「この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。」第38条「第三十八条  助産師は、妊婦、産婦、じよく婦、胎児又は新生児に異常があると認めたときは、医師の診療を求めさせることを要し、自らこれらの者に対して処置をしてはならない。ただし、臨時応急の手当については、この限りでない。」の改正ではありません。
しかしながら、助産師養成の教育内容を変更することは、将来的に助産師ができる業務の中に、「臨時応急の手当て」ではなく上記のものを含めたい意図があるのだと思われます。
(おさママさん、有難うございます/一部修正)

ご意見をとなると、医療、特にこの問題に関しての知識がないと書けないことのような気がして、多分一般的な感覚だと「じゃぁ私はそこまでして…」となってしまうとおもうんです。でもこれは、賛成か反対かを送るだけでも構わないそうですから、これらの資料を読まれた上で、賛成なのか反対なのかを送って欲しいです。

ちなみに、いまださんとおさママさんが教えてくださった資料、私が印刷したときには「看護教育の内容と方法に関する検討会 第一次報告」というタイトルがあったのですが、それが今開くとないのですけど…不具合?!

資料を読んでの感想になります。勤務助産師のふぃっしゅさんからのコメントもありますので、下記より是非。

ふぃっしゅさん、有難うございます。

まず、助産師が会陰切開、縫合、限定ありとはいえ薬剤投与をするというのは断固反対です。これらについては過去の

  1. 助産院での会陰切開と吸引…?
  2. 助産院での会陰切開と吸引…? 其の弐
  3. 会陰縫合術についての意見
  4. 「会陰縫合術についての意見」から考える−1
  5. 「会陰縫合術についての意見」から考える−2【リプロダクティブヘルス】

をご覧ください。他にも助産師と会陰切開の話はあったとおもいますが、今日は探しきれません。
また、コメント欄まで是非、読んでください。先の二つに関しては、ブログの移転に伴いコメントを持ってこられなかったので、転記の確認をした際にお返事くださった方からの一部になってしまっています。

医道審議会内の保健師助産師看護師分科会の議事次第の7頁にある
�.助産師教育の内容と方法について
からが主としての感想です。
※強調しているのは私、琴子の母です

産科施設の集約化により、実習施設が減少している。また、実習指導者を配置できる病院は比較的規模が大きいため、このような病院にはハイリスク妊産婦が集まり、正常産の例数も減っている。そのため、正常分べんの実習が可能な施設が分散化し、学生への指導は実習指導者に委せざるを得なかったり、実習指導者がいない状況で実習を行わなければならなくなっている。

まず最初にここに私は引っ掛かったのですが、この資料は、開業助産師専門の内容についてのものなのでしょうか? そうではないですよね? 開業助産師と勤務助産師になるかは資格を持った方の選択次第であって、教育課程に差はないですよね? 正常分娩の実習が必要なのもわかっているのですが、後にある8頁
2.助産師に求められる役割と機能、実践能力を踏まえた卒業時の到達目標
1)助産師に求められる役割と機能

○また、出産年齢の高齢化により、ハイリスク妊産婦が増加し、外来における妊婦健康診査からMFICU(母体・胎児集中治療室)等において産科知識と合わせた妊娠・産じょく期の生活支援に対する役割の期待も高くなっている。

とあるわけです。ハイリスクが増えているというのは、産科医の方からも言われていますから事実だとおもいます。ハイリスク妊産婦が多い中で教育を受けている現在に問題があるのでしょうか。これはだからそのような高次の病院でも実習指導者が増えるようにするべきだということならば、やはり助産師が勤務助産師として病院へ戻っていくのが最善だということになるべきだとおもいます。しかしそれが「だからちょっとしたハイリスクなら開業助産師でも扱えるようにした方がいいんじゃない?」というようなことではないですよね?
でも9頁にある
表4 今後より強化されるべき助産師の役割と機能
1.妊娠期の診断とケア
に「ハイリスク妊婦のケア」もあって、これは病院に勤務する助産師の方に必要なんですか? それとも、開業助産師がやはり医師の協力なく開業出来るようにしていこうとしているのではないですか? 
同項には「正常妊婦の健康診査」「超音波装置を用いた妊婦健康診査」もあります。会陰切開、縫合、薬剤投与も勿論ですが、どうしても医師からの離脱をはかっているとしかおもえません。自立とか自律と言っていますが、意味が独りよがりで暴走としかおもえません。私たち産む側がこれらを本当に望んでいるとおもっているのでしょうか。
他にもこの項目には色々とわかりやすく問題点が書かれています。

2.分べん期の診断とケア
1.医師がいない場での会陰切開及び裂傷に伴う縫合
2.医師がいない場での止血等の限定された薬剤投与
3.医師がいない場での新生児蘇生(蘇生は今までなかったのが不思議でした)

3.産じょく期の診断とケア
4.生後1か月の母子の健康診査
5.乳房ケア

4.女性のケア 5.出産・育児期の家族ケア 6.地域母子保健におけるケア
6.育児ノイローゼや虐待の予防と対応
7.STI(性感染症)予防の対応

7.妊娠期、分べん期及び産じょく期における緊急時の母子への対応
8.妊娠期から育児期まで継続したケア
9.他職種、他施設等との連携

育児ノイローゼや虐待の予防は、その専門家に任せた方が良いとおもいます。そのような実態を見つけるために教育を受けるというのなら必要だとおもいますが、どのくらい入り込んでいくご予定なんでしょうか。母乳ケアもそうでしたが、育児ノイローゼのための開業もありになっていくのでしょうか。マタニティブルー等、産後鬱で集まる方達の存在も知っていますが、それには助産師ではなく、精神科医の方が深く関わるべきではないでしょうか。多分、母乳ケアをしていたら産後鬱の方もいて、そこで必要になるとかもあるのだろうとおもいますが、それはあまりにも自分達を高く評価し過ぎです、それに気がついたり相談されたりしたら、そこで専門家を紹介するのもプロの仕事ではないでしょうか。
STI(性感染)は性感染症(sexually transmitted diseases STD)|慶應義塾大学病院 KOMPASを見ましたが、私はどうしても、助産医、そして助産院ではなく、助産医院を開設したいのだとおもいます。産婦人科医院であってはいけない、助産師が主導権を持った、そして多分、嘱託医も要らない、搬送を受け入れてくれる提携医院の確保くらいにしたいのではないでしょうか。私は読んでいて、恐ろしくてたまりません。
そして、今までのご自分達の発言をどうおもわれます? あれだけ会陰切開しないでも産めるのに、病院だと医師の都合で切るだけだというように言っていたのはなんだったのですか?
助産院や助産師、自然出産万歳派の方達の、そして支援者の方からはこのブログに対しての圧力ともいえる攻撃を時折頂いてきましたが、助産師の言うことならなんでも問題ないと本気でおもわれます? 私は相当な残念なことにおもいますね。私は2003年の8月まではそちら側にいたわけですが、あの頃の自分がこのような意見を知ったらどうおもっただろうかと、なるべく色々と知った事実、問題への知識を排除して考えるようにここ数日しましたが、それでも答えは「なんで? 切開はしないで産めるって言ってたじゃないの?」なんですけど、どうですか? 緊急時に必要っていう曖昧で妙な設定を必要におもわないでください。身体にメスを入れること、それには麻酔も必要になること、縫合するということは、半年が1年になったというだけの時間で身につくことになるとおもえますか? 私への嫌悪感で悪戯に、安易に賛成とはしないで欲しいです。これは私たちを今まで騙していたのかと言いたくなるほどの内容だと私はおもいます。
私はとっくに自然出産万歳派ではなくなっています。だから私は今までとっくに騙されていたと知っています。ホメオパシーの件だって、いまだに手放せないのは助産師でもあるのに、助産師会は産む側が選択しているという見解で終わったままです。講演会まで開いていた組織がこのような問題に対して責任をとれないままなのに止血の限定された薬剤の投与って、任せられますか?

10頁には

(1)大項目別の到達目標と到達度
1.大項目・中項目「1.母子の命の尊重
助産師の実践能力である「助産における倫理的課題に対応する能力」を踏まえ、大項目・中項目に「1.母子の命の尊重」を新たに設定し、小項目を「1.母体の意味を理解し、保護する」、「2.子供あるいは胎児の権利を擁護する」、「3.両者に関わる倫理的課題に対応する」とした。到達度はそれぞれレベル�とした。

とあります。私は母子の命の尊重をして、胎児の権利を擁護するためならば、このような内容で議論するのではなく、今までの事故例をきちんと精査し、医師との協働、周産期医療の中にあるための見直し、再教育に徹底して欲しいです。助産師の権利、業務拡大は論外です。

後には多分、更年期障害のことだろうとおもえる項目もあります。11頁の

6.大項目「8.ライフステージ各期の性と生殖のケア(マタニティステージを除く)」
○中項目「M.中高年女性に対する支援」においては、中高年の女性に対する助産師特有の役割について学習することとし、小項目「73.健康的なセクシュアリティ維持に関する支援と啓発を行う」、「74.中高年の生殖器系に関する健康障害を予防し、日常生活を支援する」を位置付け、小項目73の到達度は�、小項目74は到達度を�とした。

からそう読み取りましたが、間違いないでしょうか。これは以前にsuzanさんが更年期障害を簡単に扱える問題にするべきではないというようなご意見をくださったことがあります(今、その貴重コメントをみつける時間がなくてすみません!)。

全文読んで院内助産院のあり方にも多分、変化を望んでいるのだとおもいました。いつも拝読していますうろうろドクターさんの「院内助産」は横須賀を救えるか? にもありますように、常勤の産婦人科医がいない病院での院内助産も全国2例目とはいえ、少しずつ増えていく傾向があるのだとおもいます。会陰切開、縫合、薬剤投与や他にも先に述べたような医師まがいの資格が与えられた「助産医」を求めてもいくのではないでしょうか。私は助産院はせめて院内助産院とおもうようにしても、正直に言うと、なんで病院にまでいってわざわざ少しでも医療から離れようとするのかがわからないんです。院外からの急変よりはまだ医師も確保しているからとかっていうのより更に事態は悪化し、常勤の産婦人科医がいない病院での院内助産…これは院内といえるのでしょうか? だから助産医? 

私は断固反対です。
12頁

7.大項目「9.助産師としてのアイディンティティの形成」
助産師の実践能力である「専門的自律能力」が明確化されたことを踏まえ、大項目と中項目を合わせて「9.助産師としてのアイディンティティの形成」とし、小項目を「76.助産師としてのアイディンティティを形成する」とした。到達度は、レベル�とした。

アイディンティティって、私たちはあなた達の存在価値を証明するための道具なんかじゃない!
そして、いつ、実践能力である専門的な自律能力が明確化されたのですか? 私には助産院や自宅出産で明確した問題をここまで無視して何を?とおもいますけどね。助産院や自宅出産で実際に人が死んでいるんです。多くは胎児であり、私たちの大切な子供です。母体の死亡例は直接はまだ聞いていませんが、ネットで「畳の上で血だらけになって姉が死んだ」という話を読んだことがあります。全くないことではないのだろうと悲しい想像をしております。母体に損傷があった事例は直接あります。

医師の方達はもしもこれが認められたとしたら、その教育に協力されるのですか? なんだか色々と残念で悲しくなる議論です。
私は病院で勤務し、医師と協働し、周産期医療の過酷な労働の中で母子の安全のために必死で働いてくださっている助産師の方達に敬意を表し、そしてこれからはそのような助産師の方が増えてくださるように祈りますし、そのための議論にして欲しいです。