パブコメの意見の参考に ※12/1;追記あり

先日の当ブログパブコメへの意見、そして私は今日、パブコメに意見を送りました。
今回はコメント欄に頂いたご意見から、参考にして頂けたらとおもったものをご紹介いたします。ご意見くださった皆様、有難うございます。
※強調しているのは私、琴子の母です

asimoさんから
琴子ちゃんのお母さんはじめまして。地方の周産期センター産婦人科医をしております。
助産院での会陰切開、縫合、投薬を可能にすることに関しては私も反対です。

今回のパブコメでは助産師にも緊急時に備えて会陰切開・縫合、投薬を可能にするということを検討とありますが、どういう状況であればそのようなことが必要になるのでしょう?。病院勤務の助産師の場合、分娩時そのような処置が必要となっても基本的には医師がおりますから対象になりにくいと思われます。万が一帝王切開等が重なり側に医師がいてなくても投薬なら院内のPHSで指示を仰ぐこともできますし、会陰の創部からの出血であってもガーゼで圧迫くらいはできるでしょう(救急救命士でも心配停止患者の心臓マッサージや気管挿管はしても、交通事故の怪我で出血している患者さんには圧迫等で耐えしのぎますよね。さすがに救命士は縫合処置まではしないし社会はそこまで求めないでしょう。)。

では助産院ではどうでしょうか?。現在の助産院では正常分娩を取り扱う施設であるとされ会陰切開・縫合や投薬などの本来医師資格をもつものが行う処置に関しては法律で禁止されております。また多くの助産院のスタイルとしてお産は自然なもので、会陰切開等の医療介入について否定的意見をもっていることが多いのも事実です。(助産院の助産師たちがこんなもの認めなくていいと要望を出してもらいたいくらいです。)。しかし分娩進行中胎児の心音が落ちて会陰切開をしても早く出さないといけないような状況や、どうしても会陰が切れてしまうことはあります。お産にはそういうやむ得ない事情というものが多々発生します。そのようなときに医師を呼ばずに自分たちで処置できればいいという思いが出るのは当然の流れだとおもいます。しかし何度も申しますが助産院は正常分娩を扱う施設です。このようにやむ得ない事情が発生した際は、もはや正常分娩とは言えず早く医師の応援を求めるべきです。(切開や縫合、基本的なものではありますが奥は深いです。付け焼刃で身につくとは思えません)そのためにも嘱託医とは万が一に備えて対応できるよう常日頃緊密に連携をとっておくことが大切です。
どうしても自分で切開して縫合するとおっしゃるのなら局所麻酔のアレルギーでショック状態になった場合や血腫ができたり創部離解、感染等起こしたときも自分で責任を持たなくてはいけません。そのときは医師にまる投げ、では無責任すぎます。助産院には万が一麻酔に対するアレルギー症状がでても対処するだけの設備があるとは思いません。 (そもそも局所麻酔をかけることも医師が行うべき処置になりますので助産師が行うのはどうかとおもいますが。。)

産婦人科医師不足に乗じて助産師のアイデンテティ向上のために会陰切開や縫合、超音波診察などを安易に認めるべきでないと思います。各処置にはそれぞれの合併症がありますし、検査には合併症に加えて検査の結果に対する責任も生じます。エコーで体重計測の際に患者さんに渡した赤ちゃん顔写真のなかに知らず知らずのうちに何か異常(胎盤が肥厚しているだとか)が写ってしまっている可能性もあります。推定体重くらいとお思いかもしれませんが写っているものは証拠となりえます。

私は、助産師のアイデンテティ向上を産婦人科医が専門性をもって行っている業務を肩代わりする方向に向かわせるくらいなら勤務環境や待遇を改善して産科医師を増やすように努力すべきだと思います。我々産婦人科医師も一種の外科医であり、切開や縫合などは学生時代から早く一人前になれるよう練習を積み重ねてきた分野であります。また切開縫合は奥が深く、外科医の腕の見せ所でもあるような処置のひとつでもあります。それを安易に助産師でもできる簡単な業務かのように扱われるのは外科医のプライドを著しく傷つけており外科医のアイデンテティを否定するものでもあり残念でなりません。

助産師には分娩介助だけでなく妊婦生活を通してどういう生活を心がけるか、陣痛はどのようなものか、分娩時の呼吸法の指導、お産後のケア、赤ちゃんとのかかわり方などといった医師にはできないような保健指導という重要な仕事があるとおもいます。助産師を助産医にするくらいなら産婦人科医を増やす方が合理的であるし、助産師の専門性やアイデンテティ向上を目指すのなら医師ができないような保健指導に力を入れるほうが妊婦さんにとってもよりよい妊娠生活をおくることができるのではないかと思います。

ふぃっしゅさんから
一介の勤務助産師が助産師教育に関心を持っても、情報を得るすべがほとんどないのが現状ですね。
ちなみに看護協会ニュース最新号では、「保健師助産師の教育カリキュラム案まとまる」とわずか30数行での紹介です。内容は単位数の変更のみで、詳細はまったくありません。
看護協会に属している助産師は、自分たちの業務変更の行方を知ることさえ機会がないのです。まさに「寝耳に水」で、いつの間にか助産師に会陰切開・縫合までするように、医師がいない場でもどんどん分娩をとるようにという方向にされていくのでしょうか?

以前の助産師の教育でも、当然異常時の対応は学んでいます。会陰切開・裂傷縫合、吸引分娩、骨盤位牽出術、胎盤用手剥離、子宮双合圧迫法などなど。
当然、医師の介助をする助産師には必要な知識だからです。
それをなぜあえて「医師のいない場で」とするのか。
もしその異常への対応を「臨時応急の処置」としてする機会があるとすれば、本当に一生に一度あるかないかだと思います。
asimoさんが書かれていらっしゃるように、院内ではまずほとんどあり得ないと思います。路上産とか、自分しか産科の知識がある人がいない場合に止む無く、それくらい「臨時応急」ということには覚悟が必要なことと受け止めていました。
わずか半世紀前の日本も、医師に診てもらうことができずに助産婦だけの臨時応急の手当てで、どれだけ悲しいお産があったか。それを教えるのが教育だと思います。

助産師のアイデンティティ。摩訶不思議な言葉でどうとらえたらよいのかわかりませんが、周産期医療の向上のために働いてきた助産師がまるで「自立していない」かのようなキャンペーンをすることは、とても失礼なことだと腹立たしい限りです

黒い助産師さんから
あまりにも支離滅裂な内容に、どうまとめて意見すべきか頭が痛いです。
「あれもやる、これもやる」ばかりで、それに伴う責任・義務については何ら言及のないお子ちゃまの我侭でしかありません。


皆様ご指摘の医療処置のみならず、育児ノイローゼや虐待の予防と対応等々、自分たちの能力を買いかぶりすぎです。他職種との連携も挙がっていますが、「まだ私(助産師)が様子をみても大丈夫かもしれない。もう少しひどくなったら連携しよう」といったケースが不幸な転機を辿ってしまうことも、十分にあり得ます。「私が何とかしてあげたい。力になりたい!」という思いの強い助産師っています(もちろん非医療職の方にもいらっしゃいますが)。時にそれは「偽善」でしかありません。虐待の問題の根の深さをどこまでご存知なのでしょう?

生後1ヶ月の健康診査。正常に経過していた新生児の急変の恐ろしさを知っていたら、とてもじゃありませんができません!

とにかく、全項目において「義務・責任」について議論してから要望してくださいという話しです。最終的には医師に・・というのは甘えでしかなく、専門職としてのアイデンテティも何もあったものではありませんね。

助産師として非常に残念です。

ふぃっしゅさんから
最近の看護教育の実際はよくわからないのですが、DVや育児ノイローゼ、虐待などは助産師教育で特化されるようなことではなく、むしろ小児看護、精神看護など看護の基礎教育の部分でこそ授業数を増やして教える内容だと思います。
「子育て相談」を開業のひとつの柱のように扱うのは、あまりに安易だと思いますね。

育児ノイローゼを語るのであれば、過去、助産師が根拠もなくお母さんたちに勧めてきた育児法や母乳育児などで精神的負担を負ってきた事実があることも、きちんと調査研究し明らかにされる必要があります。
それが「職業倫理」であり、責任だといえるでしょう。

※12/1;追記
2010/11/28 16:22のいまださんのコメントにあるURLが開けないという方がいらっしゃり、それに対してご回答くださった方の内容を下記に。同様にご覧になれないという方がいらしたら、参考にしてください。

厚生労働省http://www.mhlw.go.jp/index.shtml
審議会、研究会等:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/indexshingi.html
ここの一番下に「上記以外の検討会、研究会等」。
医政局:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008zaj.html