傷ついている子がいるのではないだろうか

2月25日に毎日jpにこんなんあるよと教えてもらい、拝見しました>発信箱:誕生学のすすめ=本橋由紀(夕刊編集部)
この記事を既にご覧になられている方が殆どとおもいます。これが夕刊だったからでしょう、翌朝にIさんから教えてもらい、すぐに拝見しましたが、ツイッターで吠えつつ、もうこの方の侵食っぷりにはブレーキが利かない状態だろうと諦めモードもありました。でも、それではいけないよって琴子が声を掛けてくれたように感じるメールが昨夜、私に届きました。
琴子を通じて出会ったMさんが、「毎日新聞に自分の意見を送った」ということでくれたその内容は、この記事にある

「子ども自身が命がけで産道を通って生まれたこと、赤ちゃんの時に家族からとても愛されたから、こうして生きていることを伝えるの。すると子どもたちは自信を取り戻し、未来に目を向ける」と教えてくれた。

という、産道を通ることだけを主にして考えられること、伝えられることをもうお終いにするべきだという、とっても重要なものだとおもったのです。なので、ブログで紹介させて欲しいとお願いしました。
ある個人の思想を“誕生学”として世に広めようとしていること、問題だらけの発言によって傷付く子供がいるということを私にも伝えさせて欲しいとおもいました。今回、琴子と一緒に背中を押してくれたMさん、そして記事を教えてくれたIさん、有難うございます。

まず、子供が生まれてくるのに、産道を通れない場合があることをどうおもわれるのでしょうか。その子は命がけで生まれてきていないということで、またとんでもない言葉が実は隠れているようなきがしてなりません。産道を通ったか否かで人の人生を決めてしまうのはもうやめるべきです。これを記者の方も記事にしながら疑問におもわなかったのでしょうし、行政、学校で実際に依頼している方達の中には、少しでも疑問におもう方はいなかったのでしょうか。非常に残念ですね。
赤ちゃんの時に家族からとても愛されたから、こうして生きていることを伝えるというのは、理想論なだけで、実際には児童養護施設で育っているお子さんも、養子縁組で家族になっている方も日本に多くいらっしゃいます。もしもこの講演なり授業を受ける方の中に施設で育っているお子さんや、養父母と暮らすお子さんがいたらどう捉えるのでしょうか。もしもその場その場で言うことを変えるという対応があるということだとしたら、一般化させるべきではない意見をわざわざ新聞で取り上げているということになりますよね。どのように配慮するべきなのか、こういうことも専門家の方が責任もってされるべきことではないかとおもうのです。それによって傷付くかもしれないという問題にも苦悩しているような発言を、なぜかいつも感じられないのです。

せっかくだから、当時3年生だった息子のクラスでも子ども向けと親向けの「誕生学」を、と担任に持ちかけると「大賛成」。ところが校長から「待った」がかかり、10人ほどの親だけのこぢんまりした会に。参加者の満足度は高かっただけにもったいなかった。

何を根拠にして待ったをかけたのかはわかりませんが、この校長は正しい判断をされたとおもいますよ。
しかし方々から「誕生学が近付いてきている…」というお話を伺っていますので、また、行政での母親学級でも依頼してたりとか、本当に日本は何を軸としていくのか不安になりますね。責任感もって調べれば、偏見的で差別の多い内容に気がつくことは出来るとおもうのですが、

 大葉さんが05年に設立した「日本誕生学協会」は今年3月には公益社団法人となることが決まり、「妊娠出産検定」も始める。10年度は12月までに129校1万4900人で誕生学を届けた。門戸は広がったが、まだ壁を感じることはあるそうだ。

ということで、国が認めてしまったわけです。これは以前にも記事にしました>妊娠、出産に検定が必要なのか?
壁を感じてしまうのは私の方です。医師でもない、助産師でも看護師でもない方が医療に触れるとっても重要な問題で、学校や行政主催で講演(教室?)を実施してしまっているのです。本当にこれは問題なんですけどね、この問題も私たちがしっかりと事実を知っておくこと、学んでおくことが重要になりますね。

Mさんが毎日新聞社に送ったご意見です。個人情報に触れる箇所のみ、こちらで修正しておりますが、基本的には本文のままです。

2月25日の発信箱「誕生学のすすめ」では、子ども自身が命がけで産道を通って生まれ、赤ちゃんのとき家族に愛されたからこそ今の自分があるということを小学生に伝える「誕生学」の授業が紹介されていた。私は子どもを帝王切開で出産したが、このような授業を受けたらどう思うだろうか、と想像するだけで胸が痛む。
私の第1子は「●●●」という異常産だった。医師の迅速な判断のおかげで生まれてくることができた。しかし、近年の報道では「自然なお産」がリスク説明もなく無条件に称賛されるばかりだ。出産方法が親子関係や虐待リスクと結びつけられることもあり、腹が立つ。
また、遺伝上の親と産みの親、育ての親が一致しているとも限らない。
「誕生学」の授業が行われる教室の中には「自信を取り戻し、未来に目を向ける」子の陰で、傷ついている子がいるのではないだろうか。
「自分の体を守る知識と知恵」を育む事は大切だと思うが、その前に大人の人権意識や倫理観、医療知識を育んで欲しい。

せめて、毎日新聞の記者の方にはMさんの気持ちが伝わってくれればと、これらの問題を記事にするときに思い出してくれればと願うばかりです。


私は「生まれるとき」にばかり執着して考えるのは、「死ぬのは運命」と片付けるのと同様、問題を前にして、知恵の枯渇を感じてしまうのです。