「早期母子接触」は必要があるのか?

「早期母子接触」実施の留意点について、助産師のふぃっしゅさんがシリーズで記事を書かれています。
「早期母子接触」ってなんですか? 1  <母子の当然の権利?>※シリーズですので、順次お読みいただければとおもいます
ふぃっしゅさんのお話をご覧いただければ十分とおもいます。


ここからは「出産であっさりと子どもが死んでいく様子を経験した親の意見」です。
もし、これからバースプランを書くという方がいらっしゃったら、「生じている統計学上からは、確率が低い」と言われている件の中で子どもが死んでしまった場合を想定しながらお読みいただければとおもいます。


早期母子接触とは、

【「早期母子接触」実施の留意点】
1. 「カンガルーケア」とは、全身状態が安定した早産児に NICU(新生児集中治療室)内で従
来から実施されてきた母子の皮膚接触を通常指す。一方で、正期産新生児の出生直後に
分娩室で実施される母子の皮膚接触は、異なるケアが求められるにも関わらず、この「カン
ガルーケア」という言葉が国内外を問わず用いられ、用語の使用が混乱している。そこで、
正期産新生児の出生直後に実施する母子の皮膚接触については、ここでは「早期母子接
触」と呼ぶ。

「早期母子接触」実施の留意点2頁目)
ということで、NICU内で行われるカンガルーケアと、そうではない場合との差別化するために名称を変えようとなったそうです。

早期母子接触助産院や自宅出産でも行われています。数年前までは危険視する声は少なくとも、私たち一般人レベルには届かないものでしたので、私も琴子の妹を出産した時に、今思えばしっかりと管理してくださっていましたが、私はその管理されている理由もわからないままに早期母子接触(当時はカンガルーケアという意識の基)をしてもらいました。
しかし、結構きつくて、次の子を出産した時にも、まだ危険視されている声を知らなかったままでしたが、もうお願いすることもしませんでした。早期母子接触した子もしなかった子も、どちらも私に対して同じように愛情を求めるし、同じように拗ねるし、そして同じように愛しいので、早期母子接触をしなかったことを悔やむこともありませんし、した子に関しては、よくぞ危機的な状況にならずに済ませてくれたと、当時の助産師の方に感謝しています。また、母乳の出も全く変わらず、下の子の時にも出過ぎで困っていました。

私がカンガルーケアって本当は危険だったの?! と知ったのはこの頃です。

当時のコメント欄追記にあるように、カンガルーケア自体が問題ではないとしても、相当の管理下でないと子どもの急変に気がつけないことなどから、マンパワーの不足をおもえば危惧すべき行為だということになるというのは、当時、やはり一般的には知られていませんでした。


カンガルーケア(早期母子接触)について、過去歴です。

今回の「早期母子接触」実施の留意点を読んでもおもうのですが、早期母子接触はした方が良いのですか?
私はこのように、リスクのあることを勧める意味がわかりません。
確かに、生まれた直後の子どもの肌と触れ合うのは幸せに感じる一瞬でしょう。でも、「もしかしたら、それでお子さんが危険な状態に陥ることもあるかもしれない」という説明をしてまで選択させるほどのことなのか、という疑問です。無事に生まれたから一つでも多くのことを経験しようと思うのではなく、無事に生まれたことだけに感謝すれば十分なのではないかと思うのです。
母親たちに「自分に必要なことだとおもわせて、危険についても少し説明した上で選択をさせる」その必要性がわからないです。
もしかして、勧めている方たちの心のどこかに、私たちが凄く頼み込んでいるように思われていることがあるのでしょうかね。そうだとしたら、それこそ胎盤食の話と似ていて、「食べた方が良い」という情報に出会ってしまったことで、「食べたい」が生じ、「ここでは食べさせてくれるんでしょうか?」という質問になっているのであって、早期母子接触だって、(「早期母子接触」実施の留意点3頁目と6頁目)

2)背景
出生後早期から母子が直接肌を触れ合い互いに五感を通して交流を行うことは、人間性
露の面から見ても、親子が育みあうという母子の当然の権利ともいえる。

とあったりして、「やれるんなら、やった方が良いんだろうな」と思えるようになっていますよね。更には

<実施方法>
早期母子接触は母子に対して種々の利点がある。
(略)
◆分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥
期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。

とまで。やらなかった場合のデメリットとまで書かれている。それも、克服って凄く大げさな気がします。
先に述べましたように、私は琴子の後に二人の子を授かっていますが、一人は経験アリ、一人は経験ナシ。どちらからも変わらない育みを頂いていますし、人間性も下の子にマイナスのものを感じません。早期母子接触のデメリットは、こんなことで母親を追い込むことでしょう。

管理さえ整っていればというような意見もありますが、もしもマンパワーや設備が潤っている施設だったとしても、「お産はいつ何が起こるかわからない」と言われる場で、同時多発に起こるかもしれないそれぞれのリスクを前にして、100%管理できるとは言えないはずだと思うのです。そのような事態にたまたま自分たちが居合わせてしまっただけで、自分か、もしくは別の誰かが犠牲者になるかもしれないような選択をさせる必要性があるのでしょうか。
自分の「早期母子接触」のために誰かが、そして誰かのために自分がしていた「早期母子接触」で生じた異常に処置が遅れてしまったとしたら? そういう可能性も否めないと思うのです。
「だからこそ、マンツーマンの開業助産師のところで」と仰るとしたら、それにも疑問を抱きます。そもそも、異常がいつ起こるかわからないと言われている出生直後に、「もしかしたら搬送することになるかもしれない」という手法を、医療処置が許されない領域でして良いはずがありません。今までは「カンガルケアーが良いものならば、誰にしたって良いはずだ」という感覚で用いてしまっていたことですが、ガイドラインが出されたり、更に留意点が出されたものを、今まで同様に語って良いはずがありません。日本助産師会もこの「早期母子接触」実施の留意点に名を連ねていらっしゃるのですから、ここからは開業助産師が助産院や自宅出産でして良い行為なのかを、きちんと明言するべきだと思います。「留意点、ガイドラインを読みました」、「説明しました」、「納得して選んでもらいました」が、母子の安全を語っているとはおもえません。

「早期母子接触」実施の留意点の2頁目にある

5. 妊娠中(たとえばバースプラン作成時)に、新生児期に起き得る危険状態が理解できるよう
に努め、「早期母子接触」の十分な説明を妊婦へ行い、夫や家族にも理解を促す。その際
に、有益性や効果だけではなく児の危険性についても十分に説明する。
6. 分娩後に「早期母子接触」希望の有無を再度確認した上で、希望者にのみ実施し、そのこ
とをカルテに記載する。

何度も同じことを言いますが、ここまでして、親を説得するようなことまでして、どうして子どもをリスクある状態に導かないといけないのですか?

児の危険性についても十分に説明する

何故、折角無事に生まれた子どもに危険性を作る必要があるのか?
カンガルーケアではなく、早期母子接触の場合は子どもをあえて危険にさらすことだということですよね?
カンガルーケアは超未熟児などの、リスクのある子に対して管理しながらの治療とおもっていますが、早期母子接触は違いますよね?
名を変えてまでさせる必要はないとおもうし、子どもにリスクを与えてまでするのだとしたら、ロシアンルーレット、その銃口は誰に?を、これらを支持する方達でさせることのように思います。

出産直後の、カンガルーケア・完全母乳等のため脳障害を受けた新生児を抱える『患者・家族の会』という会があります。ここで訴えられている方たちも、統計学上では、ご自分たちが悲しい結果に入らないはずだったと思います。でも、入ってしまえば、100%の出来事です。出産後に子どもを襲うかもしれないリスクは早期母子接触だけではありません。だから、早期母子接触をしなければ後は安心だなんて思ってもいないし、言うつもりもありませんが、だからこそ、わざわざ子どもにリスクになるようなことをする必要があるのか、と私は言いたいのです。

子どもが死んでからとか、障害を持ってから気づいても遅いのです。もしも誰かが語る「やった方が良さそうなこと」なんて気にしないでください。「聞いてもやらない」だって、人として立派な判断ですよ。私みたいに、「良さそうだな」なんて安易に流されて子どもが死んで、これのどこが立派なことだと言うのか。私はこんな結果を望んだわけではない、「その方が子どもにも良い」なんて安易なことを言う人たちがいて、信じた愚か者だったたのです。信じた私が一番悪い。しかし、追い込む人もいるんです。それは大半が、「善意」とみせてやってきます。

何度も聞きます、折角無事に生まれた子どもに、なんであえてリスクとなるような行為を必要にするのでしょうか? 子どもにリスクの可能性が生じることををちらつかせてまで、親に選択迫るような必要はあるのですか?