逆子の場合

裁判を始めたと、昔世話になった方に報告も兼ねて会いに行った。

琴子のことをそんなに話したりしていたわけではないのだけど、リンズを妊娠中、

「辛いよな」

としきりに言ってくれていたのが心の深いところに残っている。


「じゃぁなんだ、産婆は全然反省していないのか」

私が一通り、今日までの経過を話した上での感想。

そうなんだよね、産婆は結局、全然反省していない。

「向こうの書面を読んでいると、一体これは誰宛の話なのだろうかとおもうほど、私の話じゃない内容なんです」

これは初めて読んだ時からの率直な私の感想。

本当に見事なまでの嘘の羅列。

ここまで嘘で固めるのなら、後からどんなに『反省しています』みたいなことを言われても、全く信じようなんておもえるはずがない。


「裁判は大変なんだろ、辛いこともあるだろ」

と案じてくれていたのだが、実は今はまだそんなに大変じゃないし、辛くない。

だって、一番辛かった琴子とのお別れに比べれば、こんなのどうってことない。

例えこの日々が私のこれから先の一生続くことになるとしても、多分そんなに辛くない。


「でもあれだな、人っていうのは全く違う感覚で生きていたりするんだよな」

そうなんです。

産婆には産婆の感覚があるのだ。

産婆は『子供が死んでも所詮は他人の家の話』という感覚なんだろう。

だからあれだけの嘘を平気でつくのだろうし、私への約束を平然と破って、今年の8月まで出産を預かろうとしていたのだ(結局、どうなったのかはまだ未確認。助産師会にもっと強く言わなければ!)。

だからといって、それは正しい感覚ではない。

間違った感覚は修正が必要だ。


逆子の分娩を助産院で扱ってはいけないという決まりがあったのに、私はそれを知らされなかったと伝えたら、

「そんなの誰だって知らないよな、プロとして伝えなくちゃいけないよな」

と怒ってくれた。

そう、プロとして伝えるべきなのに、それを全くしていなかったH助産師。

そして反省をしていないH助産師。


「でもよー、助産院でのこういうのって、本当はもっとたくさんあるんだろうな」

私もそれは知りたい。

蓋をした悲しみをいじくりまわすつもりはないけど、後に続く人に伝えられるのならば、正確な数字を知りたい。