追い詰められた心

ある方のお話。

私の知人が親しくしている助産院に、不妊治療の末に授かった子どもの出産の依頼が来て困っているという話があった。

助産師会の定めた基準の中で、不妊治療の末の妊娠の場合、助産院だけで扱うのは難しく、病院にきちんと通い、経過良好の場合は助産院でも分娩可能という。

医師の許可が必要で、妊婦自身の希望と助産院の解釈だけでは受け入れてはいけないとなっている。

異常分娩とまではいかないから、全く駄目ということではないのだけど、この助産師さんは「やっと授かった命なんだから、病院で万全の体制で出産した方が良い」と言い、不妊治療の末の妊婦さんを預かる助産院は殆どないだろうと言い、「もし他の助産院で受け入れるというところがあったら、そうしたら私も考えるから」と妊婦さんに諦めるように話を進めていたそうだ。

この妊婦さんは何度もこの助産院に通い、何遍も何遍も頼みこんでいた。

同じ助産院に勤める他の助産師の中には

「なんだか病的で怖い」

と言う人までいたくらいだそうだ。

地元で評判の高い助産院らしい。

知人もここで出産していて、評判は確かだと太鼓判を押していた。

ちなみに関東圏内の某県。


私は時折、この方のことを思い出す。

今頃は出産を終え、無事であればお子さんを囲んでの日々を過ごしているだろう。

お産は病院でしたのだろうか。


この方が病院を嫌がっていた理由はわからない。

もしかしたら年齢もあって、帝王切開と言われていて、それで助産院ならと頼みにきていたのかもしれない。

きっと周囲から「自然に妊娠できなかった」と言われたのか、言われているように感じることがあるのか、経膣分娩に、それも“自然”と謳われることに偏ってしまう何かがあったのではないだろうか。

自分と重なることがあるからだろうか、ふと思い出し、どうしているかを聞きたくなる。

気になっていることがあって、「もし他の助産院で受け入れるというところがあったら、そうしたら私も考えるから」…Hのような助産師が近くにいたら、きっと「大丈夫だ、なんで断るんだ?」などと無責任に言い、過ちをおかしてしまいそうで不安になる。


受け入れを拒否していた助産師さんはまあまあ理想的な方なんだけど、それでも不満なのは、もっときちんとした説明をして欲しかったということ。

どうして断るのか、不妊治療の末の妊娠が抱えるリスクがあるのならそれもきちんと伝え、助産院では受け入れ難い理由をしっかりと説明し、尚且つ病院での出産も助産院での出産も違いはなく、お産はお産なのだと説明して欲しかった。

「なんだか病的で怖い」なんて冷ややかなことを裏でとは言え言うくらいなら、きちんとした情報を提供し、早く納得させてあげて、少しでもストレスの少ない妊娠期間を送れるようにしてあげて欲しかった。

どうしているかな…