出会いの中で

先日、ある場所で、妊娠7ヶ月の妊婦さん二人に出会った。

二人ともが友人同士。

私だけが初対面。


Aさんは自己申告においては高齢出産になるそうで(年齢は聞いていない)、県内のN医院という産婦人科の病院内にて、宿借りしている形の助産師にてお産をする予定。

Bさんはいくつなのかな、若い感じがしたけど、落ち着いてもいたから、もしかしたら30歳は過ぎているかもしれない、元看護士さん。

都内の実家に戻り、里帰り出産をする予定だそうで、病院を選んでいる。

二人とも初産。


Aさんの選んだ助産師さんは、私も知っている人で、何度も話したこともある。

友人数名もお世話になっている。

私もこの助産師さんの人柄は好きで、結構素敵なことを言う人だった。

ただ、日帰りなんだよね、産んでから数時間は休ませてくれるけど、なんて言っても宿借りさんだから、入院出来ない。

もしもそこで帝王切開のお産に切り替わったら、当然、そこからはN医院のN医師の登場で、そのまま入院も出来るわけだけど、助産師がとりあげた予定通りのお産だと、私の友人だと早朝に産み、午後には実家に帰っていた。

勿論、産後の産婦や子供の状況を見ての判断だとはおもうけど、産後の骨盤のことなんかをおもうと、もっときちんとしっかりと休ませて欲しいとおもうけど、ま、選択する人は、そこまで承知しての選択だろうから、私は何も言いませんけどね。

ただ、そこで産んだ友人は、

「分娩台で結局産んだから、それを知らなかったから、なんだかショックだった」

と言っていた。

琴子を産む前の、昔の会話を思い出す。


Aさんに琴子の話もしたんだけど(「お子さんは?」と聞かれたので)、むしろ反応があったのがBさんの方だった。

「実は私、助産院で母が私を産んだんだけど、私は死にかけたんです」

と…

話を聞くと、彼女には生まれたときから腸に異常があったそうで、ミルクや母乳を飲ませても吐いてしまい、全然飲めない。

それを助産院の助産師に母親が訴えても、

「生まれてすぐにはこういうこともある」

とかで、放置されてしまっていた。

新生児は出生後に体重が減るとはいえ、どんどん痩せていくのが分かるし、顔色もおかしい。

でも助産師は大丈夫という。

助産院が提携していたのかな、ある巨大病院の医師が週に1度、その助産院に来て、診察をしていたそうで、偶然にも、このBさんと母親は医師に診てもらうことが出来、その結果、「緊急手術が必要!」と言われ、Bさんはそのまま病院に搬送され、手術を受け、命拾いをしたとのことだった。

週に1度の診察日故、産んだ曜日によっては、医師に一度も会わずに退院する人もいるそうで、このBさんはもしそのまま医師に診られることなく、あと数日経っていたらかなり危険な状態であったそうだ。

「だから私の母は、絶対に助産院は産まないと言っていたし…」

と、そこまで話したあとで、Aさんを気にしていたけど、私はAさんには良い機会だとおもう。

勿論、助産院で産むという結論は変わらないとおもうし、変えることを強いる気持ちなんて微塵もない。

ただ、「お産の王道」なんてものは『母子の安全』があってこそのことで、助産院で産むことこそが正しいのだと言わんばかりの昨今、こういうこともあると認識した上での選択をするべきなんだから、私はAさんが望んでいたからこその出会いではないかとさえおもえた。

Bさんも私が

助産院だから駄目だなんて言いたくない、ただ、お産がどれだけ危険を伴うものなのか、母親だって亡くなってしまうことがある、赤ちゃんだけが亡くなってしまうことも、母子共に亡くなってしまうことだって、今でも誰にでも起こり得ることだってことは知っておくべき」

と言うと、

「私も産科に居たことがあるけど、赤ちゃんの体温は簡単に下がっていく、本当に早く、凄い勢いで死に向かっていくってことを目の当たりにしているから…」

と、すぱっと言いつつ、普段はこういう会話が出来ないらしく、途中からこれまたAさんを意識して、言葉尻が弱々しくというか、ちょっと控えめになっていた。

でも、BさんもAさんをおもってこそ、自分の経験を話していて、私はなんだか好きだな、Bさん。

勿論、Aさんも良い方なんだけどね、産後はそのまま自宅に帰るとかで、実家の方の協力も選ばず、日中は旦那さんは外に仕事に出掛けるのに、「会えないのは寂しい」ということで、産後、いきなり自分が動くつもりだそうで、それもさっきから言うように、産後数時間後には自宅に帰る仕組みのお産を選んでいるから、お節介にも心配になる。

さすがにこれは言わなかったけど、かなりの楽観主義者なのかな〜。


Bさんのような、腸の異常などは、最近はしっかりと教育されているそうで、

「最近ではすぐに病院へ転送するとか、今だと死んじゃうってことは滅多にないそうだけど、昔の助産師だと、やっぱり違ったみたいですよ」

と言っていた。

本当、医師やら何やらって、制度や教育が違っても、色々と見直されても、一度資格を得ると、放任されっぱなしだよね。

助産師だって、『逆子は危険だから、助産院では扱ってはいけない』というのを、もしかしたら真剣に知らなかったのかもしれない。

否、同世代の助産師が

「知らないはずはない」

と言っていたから、知った上でのことだったのだけどもね。


Aさんは今のまま、助産師さんにお任せして、N医院でいわゆる“院内助産院”という形でのお産を選択して、お産に挑むんだとおもう。

それで良い。

自分が責任もって、色々な情報を得た上での判断なんだから、私はそれで良いんだっておもう。